人間の寿命は500歳まで延びる?

 漢字が書けなくても、読みについては自信がある。そんな人が増えているのではないだろうか。ワープロやメール、SNSなどの普及で手書きの必要性が減り、進化した文字変換機能が適切な文字を教えてくれる。日常生活に支障をきたすことはまったくないので、漢字を書けなくなるのもムリはない。漢字を知らないと嘆くのではなく、手軽に文字が書ける喜びをかみしめるべきだろう。

 ワープロの普及に関係なく、漢字を覚えるのが苦手な人もいる。もしかしたら、それは遺伝かもしれない。遺伝子情報を変えれば、漢字を記憶する能力が向上する可能性がある。

 遺伝子の組み換え技術は古くからあるが、1個の遺伝子組み換えを実現するには、膨大な実験を繰り返す必要があり、偶然や運に頼るような精度の低い技術とされる。その遺伝子をワープロで文章を編集するかのごとく、簡単に組み替えることができたらどうだろう。これが本書のメインテーマの「ゲノム編集」である。

 ゲノム編集では、DNAを構成する「グアニン(G)」「シトシン(C)」「アデニン(A)」「チミン(T)」の文字列をピンポイントで削除したり、書き換えたりすることを実現する。なかでも「クリスパー」と呼ばれる最新のゲノム編集技術は、高校生に使いこなせるほどハードルが低いという。不老不死を実現するべく、バイオ系ベンチャーによる人体実験の報告も、すでにあるというから驚きだ。著者は最新技術の現在地を紹介し、そして警告する。「もはや後戻りは許されない」と。人類が不老不死と戦う日は、もうすぐやってくる。(亭)

『ゲノム編集とは何か』
小林雅一 著
講談社 刊(800円+税)