囲碁から理解する人工知能の現在地

 昨今のブームで人工知能の関連書籍が続々と登場している。話題の中心は、人工知能が人類を超えることを意味する「シンギュラリティ」。人類は滅びるのか、仕事は奪われるのか。

 ただ、シンギュラリティにはまだ時間がかかるからか、どうしても議論がぼやけてしまう。人工知能の技術論にしても、歴史や現状の解説だけでは、なかなか頭に入ってこない。

 本書も、全ページの半分以上を使って人工知能の発展過程と現在の技術について解説している。他の解説書と同様、この部分はどうにも気持ちが入らない。ちょっと難しいところは、つい読み飛ばしたくなる。

 ところが第4章に入ると、眠かった部分がつながり始め、一気におもしろくなる。「アルファ碁」という明確なターゲットをテーマとしているからだ。アルファ碁は今年、囲碁のトップ棋士に勝利したことによって話題になった。そのアルファ碁の仕組みを解説しているわけだが、それだけでなく、アルファ碁を通して人工知能の仕組みがみえてくるのである。囲碁に興味がなくても、人工知能の現状を理解するには大いに役に立つ。

 著者はいう「アルファ碁は『考えて』いない」。これほど人工知能をうまく表現した言葉はない。アルファ碁では人間が意識する戦略や戦術がなく、ゲームの流れを読むこともないという。ただ、勝てる手を打つのみ。

 アルファ碁をぼんやり理解したところで、もう一度、本書を最初から読み直したくなる。いや、読み直すべきだろう。人工知能に対する理解が、確実に進むはずだ。(亭)

『アルファ碁はなぜ人間に勝てたのか』
斉藤康己 著
KKベストセラーズ 刊(830円+税)