北斗七星

北斗七星 2016年12月05日付 vol.1656

2016/12/09 09:04



▼夏目漱石の直筆原文には誤字がたくさんあったと、学校で習った。国語の教師は「文豪になれば誤字も許される」と語っていたが、漱石には意図があったとも解釈されている。「坊っちゃん」にでてくる「誤楽」(娯楽)には、漱石の意図を大いに感じる。

▼世は「人口知能(AI)」ブーム。人工知能ではなく、人口知能である。「単なる変換ミスではないか」と性格の悪さを指摘されそうだが、意図があるのではと疑いたくなるほど、よく目にするようになった。大手メディアや大手企業のウェブサイトでさえも散見される。

▼AIのA。人工知能なら「Artificial」となる。人口知能ではどうか。「口(くち)」で辞書を引いたところ、「Aperture」(開き口、すき間)がでてきた。強引だが、意味合いとしては悪くない。「人口知能とは、『すき間に入る知能』である」。いかがだろうか。AI関連ソリューションを見渡すと、みごとにすき間に入っていて、人口知能に文豪感がでてくる。

▼AIは人間の仕事の多くを奪う。そう言われている。仕事をする必要がなくなったら、趣味に生きるのみとなるのだろうか。その趣味は、誤楽でないことを祈る。(風)
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