BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『コンピュータは私たちをどう進化させるのか』

2017/02/01 09:00

週刊BCN 2017年01月23日vol.1662掲載



基礎から最新トレンドまでの教養本

 コマンドラインでコンピュータを操作しているエンジニアが、マウスで操作できるグラフィカルなインターフェース(GUI)を見て、「子ども向けおもちゃ」とバカにする。いつの時代も、変化には抵抗勢力が出てくるものだ。

 とはいえ、こうした進化がコンピュータを扱いやすくし、裾野を広げたのも確か。古参のエンジニアが何と言おうとも、便利なものは確実に普及してきている。

 一方、コンピュータが扱いやすくなればなるほど、基本的な仕組みが把握しにくくなる。今後も便利になり続けるのは確実だから、知る必要はないのかもしれないが、IT業界に身を置いているのであれば、コンピュータの基礎くらいは知っておくべきだろう。

 本書は、デジタルハリウッド大学大学院客員教授である著者が、同大学で企画した全8回の講義「コンピュータ・アーキテクチャ」をベースに構成。コンピュータの基礎に始まり、CPU、GPU、OS、人工知能、クラウド、インターネット、ロボットというITの全体像をしっかり理解できる構成になっている。また、巻末には、スタンフォード大学の中村維男客員正教授との特別対談を収録。対談では「いまのままでは量子コンピュータは使えない」といった刺激的な意見も出てくるが、それらはコンピュータの基礎知識があれば理解できる。やはり、基礎は大事ということだ。

 ちなみに、便利になったからといって、古参のエンジニアにバカにされるほど、仕事が楽になるわけではない。ITの活用シーンが格段に広がっているからだ。(亭)

『コンピュータは
私たちをどう進化させるのか』
橋本昌嗣 編
ポプラ社 刊(840円+税)
  • 1