AIについて、一歩引いて考えよう

 IT業界で最も注目されているキーワードが、人工知能(AI)だ。第3次AIブームを迎え、いよいよ実用化の期待が高まっていることが背景にあるが、脅威論も渦巻く。AIの将来について、一歩引いて考えるきっかけを与えてくれるのが本書だ。

 AIは、長くブームと冬の時代を繰り返してきた。第3次AIブームは2000年代に始まり、今回はビッグデータとディープラーニングがブームを支えているといわれている。

 最近では、「まだ人の能力を超えるには時間がかかる」といわれていた囲碁で、グーグルの子会社が開発した「AlphaGo」が、韓国のトップ棋士に勝利。AIに対する注目度が一段と上がった。

 技術の進歩に伴い、AIが多くの革新を生み出すことが期待されている。日本では、人口減少に伴う労働力不足の解消をはじめ、犯罪の予知や事故の未然防止など、多くの課題の解決に役立つと考えられている。

 一方、AIが新たにAIを生み出したり、人間を支配したりする「シンギュラリティ」(技術的特異点)が、2045年に到来すると指摘する声もある。

 本書では、AIと親和性が高いビッグデータ分析システムなどが専門の著者が、「人間を困らせるAIは、存在できない」と主張。シンギュラリティについても真っ向から否定し、AIとのつき合い方を示す。

 AIの暴走を制御するのも、上手に利用するのも、人間次第。機械と同じように、便利な道具として捉えることが大事なのだ。(鰹)

『シンギュラリティは怖くない』
中西崇文
草思社 刊
(1500円+税)