信用調査マンが教える倒産劇の舞台裏

 書店に並んでいたら、衝撃的なタイトルに興味をひかれる人は多いだろう。手に取ってページを繰ると、再び驚くはずだ。和菓子の老舗や一世を風靡した楽器メーカーなど、紹介されているのはすべて実話。当然、企業なども実名で登場する。

 著者は、民間信用調査会社で25年勤務し、数千社の倒産現場を取材してきた。豊富な経験にもとづき、日本経済新聞で「企業信用調査マンの目」を連載。そのなかから、倒産劇の舞台裏をまとめたのが本書だ。

 取り上げているのは、中小企業が中心で、多くの人が身近な事例と感じられるだろう。高齢化による人手不足や損失だけでなく、不正に手を染めた実態なども描写。順調だった経営が暗転した経緯のほか、著者がみてきた現実を垣間見ることができる。現場を踏まなければわからない話を題材にした章末のコラムも読みごたえがある。

 2009年のリーマン・ショック後に「中小企業金融円滑化法」が施行され、多くの企業が借金の返済を猶予された。その結果、企業の倒産件数は減少が続く「無倒産時代」に突入した。ただ、なかには「危ない会社」もある。「またいつか倒産ラッシュの日々が来ないとも限らない」と著者は主張する。

 中小企業の場合、一般的に30年以上、存続するのは難しいといわれる。次々に新しい企業が登場するIT業界では、厳しさはさらに増すだろう。倒産を防ぎ、栄枯盛衰の激しいIT業界で生き残るためにはどうすればいいか。本書には、こうした疑問に答えるヒントが多く詰まっている。(鰹)


『あの会社はこうして潰れた』
藤森 徹 著
日本経済新聞社 刊
(850円+税)