BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『決定版AI人工知能』

2017/06/28 09:00

週刊BCN 2017年06月19日vol.1682掲載



スペシャリストが示すAIの将来像

 人工知能(AI)が、世界中で話題になっている。さまざまな分野で活用が進み、われわれの暮らしを大きく変える存在として期待されているからだ。

 AIの研究が始まったのは、半世紀以上前の1950年代といわれている。以後、新しい技術の誕生とともにブームが起こり、現実社会の課題解決が困難だとわかると、冬の時代に突入するということを繰り返してきた。

 現在は、第三次ブームのまっただ中。AIが人間を上回るのは難しいと考えられてきた囲碁の分野で、トップ棋士を圧倒したり、自動車メーカーが自動運転の研究を本格化させたりと、活用の動きは日を追うごとに活発になっている。

 AIが便利な社会を実現することが現実味を帯びる反面、将来的にAIが人間を支配するという不吉な予想もある。研究者の間でも、AIに対する意見は十人十色。AIが切り開く未来を想像するのは現時点では難しい。

 著者は、国内Sler最大手のNTTデータで、AIの研究開発に取り組む2人。400以上のプロジェクトに携わってきた豊富な経験や知識にもとづき、AIの歴史や進化の経緯などを詳しく解説し、AIで変わる産業や仕事についても言及している。スペシャリストの立場から、AIの考え方について交通整理する。

 AIは、何でもできる万能選手としてのイメージが先行しがち。しかし、上手に活用するためには、AIについてしっかりと理解することが重要だ。多くの人が疑問を抱くAIの将来像や真の姿について、本書は一定の方向性を示してくれるだろう。(鰹)


『決定版AI人工知能』
樋口晋也・城塚音也 著
東洋経済新報社 刊
(1600円+税)
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