精神を蝕む働き方に疑問を投げかける

 毎日、朝から晩まで働き、帰りはいつも終電。くたくたになりながら日々の生活を送っている人こそ、本書を読むべきだ。

 自分の置かれた立場について、正常か異常かを判断するのは難しい。長時間労働やパワハラが常態化していることを、「あたりまえ」と思っている人もいるだろう。

 「休みの日も仕事をしていた」「毎日のように徹夜していた」。常軌を逸した働き方が、武勇伝のように語られることがある。しかし、すべての人が同じように耐えられるかというと、決してそうではない。

 著者は、デザイナー時代に過労で自殺しかけたことがあるという。本書では、仕事を通じて著者の精神が追い詰められていく様子や、似たような境遇の人の体験が漫画で描写されており、力まずに読み進めることができる。

 「自分のやりたい仕事だから」「自分の好きな仕事だから」「自分で選んだ仕事だから」。呪文のように言い聞かせながら、過酷な状況を正当化する。本書に載っている言葉は、実に重みがある。

 章末には、監修を務めた精神科医のアドバイスも掲載されており、具体的な心構えなどを知ることができる。

 IT業界でも、エンジニアの労働環境は厳しいと指摘する声がある。文字通り命を削って働き続けている人がいるかもしれない。

 本書は、精神を蝕む働き方に対し、疑問を投げかけているといえる。「その仕事、命より大事ですか?」。著者の問いかけは、きっと多くの人の心に響くはずだ。(鰹)


『「死ぬくらいなら会社辞めれば」が
 できない理由(ワケ)』
汐街コナ 著、ゆうきゆう 監修
あさ出版 刊
(1200円+税)