農業は新規事業のブルーオーシャン


 1990年代以降、減少を続けてきた日本の農業生産。生産金額こそ、2015年以降はコメ価格の回復から若干の上昇傾向に転じているが、最大の問題である担い手不足はまったく解決していない。全国の耕作放棄地を合計すると、滋賀県の面積を超える42万ヘクタールに上るという。農地は相続されても、農業は継承されていないわけだ。

 しかし、本書に登場する10人の“ネクストファーマーズ”は、日本の農業こそイノベーティブな成長産業であると考え、新規参入した農業で成功を収めている。就農以前の職業も、公認会計士、宝石商、銀行員など多彩。ITによる農場のスマート化といった工夫はもちろん行っているが、それよりも彼ら・彼女らに共通するのは、他では手に入らない高付加価値の作物を、その価値を認めてくれる顧客の元へ届けようとするマーケティング思考。農業離れを食い止めるには、農地の提供や栽培技術の移転といった就農支援策に加え、農業にはビジネスチャンスがあるという事実を広く伝えていくことが必要なのだろう。(螺)


『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦』
川内イオ 著
文藝春秋 刊(800円+税)