BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『働き方5.0~これからの世界をつくる仲間たちへ』

2020/09/25 09:00

週刊BCN 2020年09月21日vol.1842掲載

ヒトはミトコンドリア的存在になるのか

 この半年、街にはウーバーイーツの自転車が走り、多くの人がリモートでの仕事を経験した。コロナ以前では見られなかった光景をメディアアーティストで筑波大学准教授の落合陽一氏はどう見たのか--。既刊書籍を大幅加筆して出版されたのが本書だ。

 今回のコロナ禍を通じて、新しい働き方が浸透しつつあることを多くの人が実感しているだろう。ウーバーイーツはコンピューターシステムの指示に人間が従う働き方であり、リモートで出来てしまう仕事は、仕事が少なくて困っている地方在住の人にとって新しい選択肢になる。

 つまり、従来のコンピューターを道具として使うのではなく、その逆もあり得る。例えば、ヒトの細胞がエネルギーを取り出すのに欠かせないミトコンドリアを内包したように、システムの中にヒトが実装される割合が増えたり、リモートの仕事が都心部から地方へ、あるいは海外のもっと賃金水準が低い国へ流出する動きが加速するかも知れない。

 タイトルの「働き方5.0」は、サイバー空間とフィジカル空間の高度な融合をうたった国の「Society 5.0」になぞらえた。コンピューターの指示に従うことで平穏で豊かな生活が送れるのであれば、それはそれで幸せなことである。だが、そういう働き方が合わない人は、高度な専門性をもって、Society 5.0で提唱されているような「これからの新しいシステム=デジタル世界をつくる側」に回ることもできる。コロナ禍によって働き方もより「5.0時代」に近づいたと落合氏は見ている。(寶)
 


『働き方5.0~これからの世界をつくる仲間たちへ』
落合陽一 著
小学館新書 刊(820円+税)
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