古いゲームは終わり、新しいゲームが始まる

 新型コロナ禍が世界に与えた影響は、いまだ収束の見通しが見えない現状で論じきることはできない。だが、不可逆な変化が起こっていることは多くの人の実感であろうし、社会システムが根本的に変わっていく可能性を感じている人もいるだろう。われわれが現在、大きな歴史の転換点に立っているのは間違いない。自分の人生の手綱をなるべく自分自身で握っていられるように、いま世界でどんな議論が巻き起こっているのかを知り、さまざまな論点に対して自分なりの考えを整理しておくのは意味のあることだ。気持ちを新たに1年の計を立てる正月にはふさわしい行動かもしれない。

 近年、資本主義やビジネスの在り方における新たな価値観の必要性を説く著作で注目を集める著者の新刊は、そのガイドとなり得る一つの視点を提示してくれる。本書で説いているのは、経済とテクノロジーの力で「物質的貧困を社会からなくす」というミッションは既に終了し、“新しいゲーム”が始まっているということ。われわれはこの状況を「停滞」や「低成長」と評価しがちだが、それは無限の拡大や成長が可能だという前提で200年以上世界を牛耳ってきた資本主義的価値観に基づくものであり、もはや適切ではないのではないかと指摘している。経済合理性に最適化された社会では解決できない貧困や格差の問題が深刻化し、新型コロナ禍がそこに決定的なダメ押しをしたという側面もあろう。新しいゲームで重視すべき価値観や、社会基盤のアップデートのあるべき方向性を論じている。(霹)
 


『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』
山口周 著
プレジデント社 刊(1700円+税)