BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ブラック霞が関』

2021/02/05 09:00

週刊BCN 2021年02月01日vol.1860掲載

官僚の過酷な勤務実態を明らかにする

 中央省庁の激務ぶりは有名だ。国会の会期中など、夜中でも庁舎の明かりがついている様子は「不夜城」と評されることがある。

 本書の著者は、厚生労働省で18年半務め、2019年に退官した元官僚。直近の状況を知っているからこそ、「強制労働省」といわれるほどの勤務実態をリアルに描写する。

 働き方改革という言葉が定着し、多くの企業は業務の効率化に取り組んでいる。しかし、帯にある「7:00仕事開始、27:20退庁」の文字通り、旗振り役となるべき中央省庁では、依然としてブラックな働き方が続いているという。

 「若い時の苦労は買うてもせよ」という言葉があるが、度を過ぎると健康を害するのは明白だ。著者は、官僚たちの世界では「石を投げれば長期休職者に当たる」と指摘し、さらに「誰もが長期休職のリスクを抱えている」とも訴える。

 これほどまでに過酷な状況になる理由について、著者は「仕事が増え続ける一方で、人員は減り、長時間労働が常態化している」と説く。とくに今の若手の業務は、著者が入省した頃よりも労働密度が10倍ほどに高まっており、仕事の話以外の雑談をする余裕がないほどになっているという。

 本書は、ほかにも女性の働き方や官邸主導の内実、直面する採用難などを詳しく示し、官僚の仕事の醍醐味についても説明する。官僚の業務改善に関する提言では、ITの活用にも言及しており、IT業界にとっては今後のビジネスのヒントが得られそうだ。(鰹)
 


『ブラック霞が関』
千正康裕 著
新潮社 刊(780円+税)
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