「脱成長」の視点で新たな経営像を

 「資本主義は限界を迎えているか」。この問いに対する答えは容易には出せないが、経済格差や気候変動、環境破壊などの課題が資本主義の負の側面であると考える人は少なくないだろう。この負の側面に対する抜本的な対策として注目されているのが「脱成長」の概念だ。

 脱成長は、永続的な経済成長は不可能との認識に立ち、経済成長の追求を止め、「意図して計画的にスローな社会をつくっていく」ことを目指す。物質的な豊かさではなく、ウェルビーイング(心身ともに満たされた状態であること)の増大を図り、相互扶助の精神や共同体による資源・生活システムの所有・管理(コモンズ)をベースに社会を構築する試みである。本書は、欧米で脱成長論を推進する経済学者らが脱成長の基本ビジョン、実現に向けた政策や戦略を提言しており、入門書として適した一冊となっている。

 脱成長の理論的妥当性は置くとしても、これまで通りの資本主義が今後も続けられると考えるのは、いささか楽観的と言えよう。国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)も、際限ない資本主義への危機感から生まれたものだ。永続的な経済成長、継続的な利益の最大化を前提としない経営・企業のあり方について考えることは、脱成長に賛同できずとも重要になってくる。「現状維持は後退の始まり」との言葉もあるが、少なくとも経済に関しては、成長が社会を前進させると無邪気に信じられる時代ではない。(無)
 


『なぜ、脱成長なのか 分断・格差・気候変動を乗り越える』
ヨルゴス・カリス、スーザン・ポールソン、ジャコモ・ダリサ、フェデリコ・デマリア 著
上原裕美子、保科京子 訳、斎藤幸平 解説
NHK出版 刊(1400円+税)