顧みられることが少なかった歴史の1ピース

 日本の中世と近世の境目はどこか。織田信長が上洛して全国統一の一歩を踏み出したことなのか、豊臣秀吉による全国統一なのか、徳川家康による江戸幕府の立ち上げなのか。諸説あるにせよ、鎌倉時代、室町時代を経て戦国時代までは中世に入るのが学識者のほぼ共通見解ではあるようだ。ただし「歴史好き」でもなければ、中世後半については応仁の乱をなんとなく知っている程度だろう。
 

 しかし実際は、応仁の乱が起こってから信長上洛までに約100年が経過している。その間も歴史は紡がれていたわけで、信長が歴史の表舞台で飛躍する以前に「天下人」(全国を統一したという意味ではなく天皇を擁し京都を中心とした畿内の支配権を確立したという意味ではあるが)となった人物がいた。それが本書の主人公格である三好長慶だ。

 まさに応仁の乱前後から一次史料が現れる三好氏の栄枯盛衰を、天下人となった長慶の軌跡を核に解説する本書は、歴史物のエンタメコンテンツでもなかなか取り上げられないテーマに光を当てている。室町幕府や近畿の大名の動向は21世紀に入ってから研究の進展が著しい分野だという。学生時代に勉強した日本史からは得られなかった発見があるかも。(霹)


『三好一族――戦国最初の「天下人」』
天野忠幸 著
中央公論新社 刊 902円(税込)