音監から見た“声優”の人材像

 アニメは子どもでも聞き取りやすいよう滑舌よくセリフを読み上げたり、絵だけでは表現しきれない部分を、ラジオドラマや舞台役者のように少しオーバーな芝居でカバーしたりすることがある。このアニメ特有の“声の仕事”を裏方で支えているのが音響監督だ。スタジオ現場で声優の芝居を指導し、監督の描きたいものに近づける“通訳”の役割を担う。
 

 本書は長年音監を務めてきた長崎行男氏が、埋もれない声優とはどんな人材像なのかを分析している。一般公募のオーディションで選ばれる声優は男女合わせて年間20人ほど。狭き門をくぐった先にも熾烈な競争が待ち受ける業界にあって、勝ち上がっていく声優を見ると芝居や歌、ダンス、進行役、ナレーションと、何にでも興味を持ち積極的に表現をしようと取り組んでいるという。専門学校や養成所などで身につくものではないし、誰かに「教えてもらおうと考えている時点で、その人は声優には向いていない」というのが長崎氏の持論だ。

 まさに「好きこそものの上手なれ」に加えて、才能と幸運を味方につけた人だけがなれる職業である。IT業界の門戸は声優ほど狭くはないが、やはりITが「好き」であり続けることが、キャリア形成の上で重要な要素ではないだろうか。(寶)


『埋もれない声優になる!』
長崎行男 著
星海社新書 刊 1155円(税込)