BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『格差の起源 なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか』

2023/01/20 09:00

週刊BCN 2023年01月16日vol.1953掲載

「適度な」多様性が重要に

 国連が推進するSDGsにおいて、1番目に掲げられている目標は「貧困をなくそう」である。国家間に広がる経済格差は深刻で、解決が困難であることは言うまでもない。

 なぜ地域間でこれほどまでの経済格差が生まれているのか。植民地主義や産業革命の影響という直接的な答えは示せるものの、「なぜ、ある地域が植民地となってしまったのか」、または「なぜ欧州が産業革命の舞台となったのか」という深い問いに対して明確な回答を示すのは難しい。

 本書は人類が果たしてきた経済成長の原動力、そして格差を生み出した要因を鳥瞰的な視点で推察している。著者は格差の背後に制度や文化、地理といった要素に加え、社会の多様性の差が潜んでいるとみる。ただし、多様性が大きすぎてもいけない。「適度な」多様性が経済発展を生むと説く。

 この仮説の真偽は置くとして、近年、ビジネスにおいても、多様性が重要と喧伝されている。ただ、多様性が大きすぎても、統制が効かず、バラバラな集団になりかねない。「適度」と表現するのは簡単だが、これからの経営層は単に多様性を追い求めるだけでなく、その度合いの見極めが必要になってくるのかもしれない。(無)
 


『格差の起源 なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか』
オデッド・ガロー 著 柴田裕之 監訳 森内薫 訳
NHK出版 刊 2530円(税込)
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