BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『免疫「超」入門 「がん」「老化」「脳」のカギも握る、すごいシステム』

2023/12/22 09:00

週刊BCN 2023年12月18日vol.1996掲載

老化を遅らせる可能性も

 人間の体には細菌やウイルスといった病原体に対する防御システムとして免疫が備わっている。人類の歴史はペストやスペイン風邪、新型コロナウイルスによる感染症に脅かされてきたが、「免疫」という言葉は、疫病から免れるという意味が込められている。感染症対策に用いられるワクチンは免疫の仕組みを利用した発明であり、免疫への理解を高めることは人類にとって重要だ。

 人が持つ免疫の仕組みは非常に複雑で、単に抗体をつくって病原体を除去するだけではない。病原体の侵入を防いだり、侵入された場合はそれを検知して周囲の細胞に知らせたりするのも免疫の役割だ。また、一度つくった抗体を記憶し、同じ病原体に再度侵入を許した場合は素早く対処できるようにする。

 近年の研究では、病原体だけではなく、体内で生成された老化細胞の排除にも免疫が関わっていることが指摘されている。ある実験では、マウスの免疫系だけを老化させた際、ほかの体内組織でも老化が加速。老齢のマウスに若い免疫細胞を移植した結果、組織が若返ったという実験結果もあるという。

 もし免疫系を若返らせることができれば、老化を遅らせる可能性を示唆する。今後の研究の発展に期待したいトピックだ。(石)
 


『免疫「超」入門 「がん」「老化」「脳」のカギも握る、すごいシステム』
吉村昭彦 著
講談社 刊 1100円(税込)
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