BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『安楽死が合法の国で起こっていること』

2024/02/02 09:00

週刊BCN 2024年01月29日vol.2000掲載

「安楽死」と「生きる意味」を考える

 医師が患者の自殺を幇助する安楽死が法律で認められている国や地域は、ベルギーやオランダ、スイス、カナダ、米国の一部の州など20カ所余りあるという。日本でも寝たきり老人の延命についての議論や、いっそのこと安楽死を合法化すべきではないかとの意見もある。

 安楽死合法化の先進国とされるオランダでは、2022年の総死者数の5.1%に相当する8720人が安楽死を選択しており、治癒が期待できないがん患者が多くを占める。その一方で、配偶者が安楽死を選んだとき、夫または妻も一緒に安楽死を選択する同伴自殺のようなケースも少数ながら存在した。

 「末期がんで苦しい思いをするのなら死んだ方がマシ」と、仕方なく安楽死を選んでいる姿が浮かび上がる。また、「愛する妻がいないのなら…」と、生きる意味を見失うケースでも安楽死を認める場合、後追い自殺を容認するのとほぼ同じになってしまう。「生きるとは何か」を改めて考えさせられる。

 行き過ぎると、子どもに先立たれた親世代や足腰が立たなくなった老人に、「生きていても仕方がないよね」と、まるで従業員をリストラするような“肩たたき”を招く危うさも内包していると本書は警鐘を鳴らす。(寶)
 


『安楽死が合法の国で起こっていること』
児玉真美 著
筑摩書房社 刊 1034円(税込)
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