BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『情報システム進化論』

2025/05/09 09:00

週刊BCN 2025年05月05日vol.2058掲載

人間の行動に資する情報システムとは

 「情報システム」という単語を目にしたとき、本紙読者のほとんどの方は、何らかの業務プロセスをコンピューターやネットワークなどの技術によって支援し、効率化を実現する仕組みのことだと認識するだろう。しかし、人間はコンピューターが登場するずっと前から、情報を集め、伝え、分析し、次代に残すといった「情報行動」を綿々と行ってきた。

 本書は、人間がどのように情報行動を発展させ、情報システムを進化させてきたのか、組織や社会のあり方といった「人間系」と、テクノロジーを中心とした「機械系」の両面からその足跡をたどるとともに、「人間中心の情報システム」とはどのようなものか、グローバルのさまざまな事例を紹介しながら考察する。

 テクノロジーの側から情報システムを論じる場合、それが人間の情報行動にどう作用するかの視点がしばしば抜け落ちる。人間を見ずに、表面的な業務の流れをそのままITに置き換えた情報システムの導入プロジェクトが、大失敗に終わるのは想像に難くない。DXで情報システムは生産性向上の手段のみならず、企業の競争力の根源と言われるようになった。提案や設計を「人間中心」で行うため、情報システムとは何か、あらためて考えを深めたい。(螺)
 


『情報システム進化論』
砂田 薫 著 
行政情報システム研究所 刊 2420円(税込)
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