BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ママ友は「自然」の人』

2025/08/01 09:00

週刊BCN 2025年07月28日vol.2069掲載

人の孤独感を狙う落とし穴

 子育て中の風景を描いた、ハートフルなコミックエッセイであるかのような表紙とは裏腹に、恐ろしい物語が展開される。子供の世話に非協力的な家族の中で孤独感を抱えていた母親が、ふとしたきっかけで参加した育児サークルに居場所を見つけ、頼りになるママ友たちとともに、子供にとってよりよい食事や教育を実践する活動に取り組むようになる。しかし、自然への過剰なこだわりを押しつける“思想強め”のライフスタイルで、次第にサークル外の人からは距離をおかれるように。“普通の人たち”からの理解が得られないいら立ちが、母親の活動をさらに先鋭化させていく……。

 この作品で描かれた物語全体はフィクションだが、原作者は美容や健康の情報を取材してきた記者で、一つ一つのエピソードには、効能に科学的な根拠のない自然派商品や健康法などでしばしば見られるマーケティング手法の例がちりばめられている。もちろん、自然由来のアイテムやライフスタイルを選択することは個人の自由であり、それによって精神的な満足が得られるのであればメリットもある。しかし、客観的な知見を否定してまでそれらにすがろうとし始めたら危険信号だ。極論が家族を傷つけることがあってはならない。(螺)
 


『ママ友は「自然」の人』
山田ノジル 原作、すじえ 作画
竹書房 刊 1430円(税込)
  • 1