Special Issue

連載 第4回 日本全国の企業を支えるDynabook 地域に根差した営業活動の実態を探る

2025/11/27 09:00

週刊BCN 2025年11月24日vol.2083掲載

 世界初(1)のノートPCである「dynabook」は誕生から36年を数え、日本を代表するPCブランドとして広く浸透している。2024年度にはノートPCのブランド別で国内シェア1位(2) を獲得し、市場からの高い評価を裏付けた。そのブランド力の根源には、製品開発を支える技術力はもちろん、全国約50カ所の拠点で構成される営業・サポート網、さらには各拠点と深くつながるパートナーの存在がある。各拠点の実態を通じて、コンピューティングとサービスで地域の顧客を支え続けるDynabookの本質に迫る。

 第4回は神奈川、東北、北海道の3支店を紹介する。各支店を管轄する東日本支社の石川祐介・支社長はそれぞれへの期待として、神奈川には「民需向けパートナーの開拓」、東北には「ローカルキングを中心にパートナーとの関係深化」、北海道には「パートナーとの協力による効率的な営業の推進」を挙げる。現場の取り組みについて、支店長、フィールドサポート部長に話を聞いた。


(1):1989年、世界初のノートPC「DynaBook J-3100 SS001」を発売
(2):「IDC Quarterly Personal Computing Model Analysis」(※)は、IDC独自の調査手法に基づき、各情報ソースのガイダンスを用いて、PC製品市場規模、ベンダーシェアの実績や市場予測を定期的に提供するデータベース製品です
※Source:IDC Quarterly Personal Computing Model Analysis 2025Q2 Share by Brand
※2024年(1月~12月) ALLSegment合計。Dynabook社のシェアは14.7%


神奈川支店 民需拡大へパートナー開拓急ぐ

 神奈川支店は神奈川県1県を担当し、小林支店長は「1つの案件に複数の企業が集まる」という競合激戦区ならではの厳しさを語る。現在の売上構成は公共案件が半数以上を占め、残りのほとんどを民需の直販と、パートナー経由の販売で占めており、公共の存在感が強い状況だが、これを「公共50%、民需の直販とパートナーを各25%にしたい」とバランスの転換に意欲を示す。
 
神奈川支店
小林康博 支店長

 目標の実現に向けては「当社製品を取り扱うパートナー様を増やすことが大前提」と語る。市場でのシェア伸長を受け、これまで競合の製品を取り扱っていたパートナーが、Dynabook製品に興味を持つケースが増えているという。

 パートナー経由の案件でも、極力、パートナーと共にエンドユーザーの元に訪れ、顧客の声に耳を傾けることを心掛けている。「パートナー様からの情報に加えて、エンドユーザー様の要望も聞き出し、受注確率を高める」狙いだ。

 「Windows 10」のサポート終了に伴う需要は「10月以降も駆け込みが続いている」状況だ。一方で反動減を見据えた準備も怠らない。「スピード感を持って新規パートナー様の開拓を進めていかなければならない」とする。その上で「PCの販売だけではなく、LCMの提案なども進め、ストックビジネスも伸ばしたい」と抱負を語る。

神奈川フィールドサポート部 高度なニーズに備えスキル磨く

 神奈川フィールドサポート部の相馬部長は、担当エリアにおける顧客ニーズについて「情報システム部門の人手不足によって、PCの管理・運用面で悩みを抱えているお客様が多い」と指摘する。Dynabookが提供するLCM運用サービスの検討・導入へと踏み出す顧客は増えつつあり、今後も顧客の課題感に対する適切な提案を示すことが重要だとする。  
 
神奈川フィールドサポート部
相馬貴則 部長

 サポートの案件において、従来はIT部門の担当者とやりとりすることが多かったが、最近はビジネス部門の担当者と対話する機会が増えているという。「ビジネス部門の方では専門的な会話が難しい場合もあり、ヒアリングの仕方にも工夫が求められる」と話す。

 神奈川ではPCの保守や運用などのサービスに関する相談が比較的多く、営業、フィールドサポートが協力して案件獲得に動いている。

 また、修理案件で訪れた顧客の元で、新しい案件が生まれることも少なくない。「メモリが足りない」「ストレージを増やしたい」といった要望を聞き取り、カスタマイズの対応につなげるケースがあり「お客様の声を受け取って対応できる」点に自社の強みを見出す。

 今後は、「Autopilot」をはじめとした、より高度なサポートへのニーズがさらに高まるとみており「スキルアップに努めなければならない」と意気込む。


神奈川支店
〒235-0036 神奈川県横浜市磯子区中原1-2-23
(シャープ横浜ビル)
電話番号:045-349-9271 

東北支店 協業深めて広域エリアを対応

 東北支店は東北6県の広大なエリアをカバーしている。針生支店長は「エンドユーザー様を1社1社訪問したり、きめ細かく対応することは難しく、各県のパートナー様との協業は欠かせない」と強調する。業種も各地域でさまざまであるため「各地区で、それぞれの業種に強みを持ったパートナー様としっかりと手を組み、信頼を得て、より良い関係を築いていくことが一番重要」だとする。 とりわけ、各県に存在するローカルキングとの関係強化に注力しており、現在進行中のGIGAスクール構想第2期でも協力を深めている。その成果として、第1期では逃してしまった地域の獲得も果たし「1期よりシェアが増えている」と手応えを示す。
 
東北支店
針生 篤 支店長

 また、エリアが広いだけに、電話やメールを活用した活動が中心になるが、ユーザーに限らず、パートナーにも直接会う際には実機を持ち込み、他社製品との違いを体感してもらうようにしている。「カタログやWebの情報提供だけではなく、実際に製品を見てもらって特長をPRしたい」との思いだ。最近はバッテリーをユーザーで交換できる「dynabook X83 CHANGER」を紹介する機会が増えており、良い反応が寄せられているという。

 東北に営業やサポートの拠点を置くPCメーカーは少なく、顧客やパートナーの近くで活動できる点は強みだ。dynabookのシェア伸長を受け「今まで見積もり依頼が来なかった案件でも声を掛けていただくようになった」。市場環境の追い風を受けながら、地域へのさらなる浸透を図っていく構えだ。

東北フィールドサポート部 大手東北拠点と連携で課題解決

 東北フィールドサポート部は、大手ITベンダーが仙台に置く事業所と協業し、顧客の課題解決に貢献している。あるSIerとは自治体関連の案件で連携しており、例えば、VDI環境のリプレース時に、比較的安価な仮想ブラウザ方式の導入を共同で進めた。蜂谷部長は「パフォーマンスが向上し、接続が速くなったと高く評価いただいた」と振り返る。
 
東北フィールドサポート部
蜂谷和敏 部長

 別のネットワーク機器メーカーとは20年以上にわたって協力し、「仙台の拠点同士で、ネットワーク構成の設計や構築、その後の技術サポートを含めて連携し、お互いに助け合いながらビジネスに取り組んでいる」。地域に根ざす拠点ならではのパートナーシップが価値創出につながっている。

 蜂谷部長自身がネットワーク構築のスキルを有し、これを生かして案件を受注した実績もある。その知見を頼りにパートナーから案件を打診されることもあるという。支店に属する個人のスキルや経験に裏打ちされた独自のサービス展開はDynabookの個性と言える。

 付加価値の高い独自サービスや、Dynabookが展開する多様なソリューションのビジネスをさらに伸ばすには「若い人材の商品知識や技術スキルをどう育成するかが最大の課題」だ。顧客の満足度を維持しつつ、いかに若手に経験を積ませられるかと苦心しながら、次世代の成長に期待を寄せる。


東北支店
〒984-0002 宮城県仙台市若林区卸町東3-1-27
(シャープ仙台ビル)
電話番号:022-390-3550

北海道支店 “横展開”で新たな販路を開拓

 北海道支店は道内全域をカバーし、売り上げのおよそ7割を公共案件が占める。岸本支店長は「道内179市町村にお客様が広がっており、パートナー様との連携で効率良く提案を広げることが課題」と語る。最近ではWindows 11への更新需要が都市部から遅れるかたちで盛り上がっており、対応に努めているところだ。現状については「業界内で『Dynabookは元気だね』との認識が広がり、新規のパートナー様からお声掛けいただくことも増えた」とする。
 
北海道支店
岸本 顕 支店長

 新しい販路を開拓する手段の一つとして、既存のパートナー内の別部署を通じた営業に取り組んでいる。一例として、文具やオフィス什器を取り扱っている既存パートナーとの事例がある。

 このパートナーとは従来、IT商材の販売部門と取引していたが、新たにパッケージ用の紙を納めている部署とも協業を開始し、IT商材の部門では接点がなかった印刷業者からの受注につなげた。「IT商材の部門とは頻繁にやりとりをしており、『PCのことならDynabookに頼んではどうか』ということで横展開していただいた。こういった例を増やしたい」と意気込む。

 ただ、やみくもに新規開拓を図るのではなく「昔からお世話になっているパートナー様との関係も引き続き大切にしたい」との思いもあり、既存パートナーとの関係を深耕しつつ、バランス良く進めていきたい考えだ。

 さらなる事業規模の拡大を目指すとともに「組織風土も含め、Dynabookの社員に『北海道支店で働きたい』と思ってもらえるような、日本一の支店にしたい」と話した。

北海道フィールドサポート部 ワンストップサポートを強化

 北海道フィールドサポート部で20年ほど前から現在まで取り組んでいるのは、顧客のPC関連の課題を一挙に引き受けるワンストップサポートの提案強化だ。樫野部長は「PCだけでなく、サーバーや周辺機器をサポートしてほしいという意見をお客様からいただくことが多く、力を入れている」と説明する。ときにはWi-Fi環境の構築といった業務も担っているという。
 
北海道フィールドサポート部
樫野 聡 部長

 故障対応が重要な業務であることに変わりはないが、近年は故障したら新しい製品に買い替える顧客も少なくない。ワンストップサポートによって年間を通じて安定的な収益を確保できることは大きく、柱として育てたいと考えている。

 最近では「Microsoft SharePoint」を活用した社内イントラネットの構築や、マイクロソフト製品によるセキュリティー強化など、より高度な領域のニーズが高まっている。新技術を積極的に学び、顧客の幅広い要望に応えられる体制を築きたいとする。

 直近ではネットワークなどの専門知識を有する若い人材が加わり、サポートビジネスを本格的に伸ばせる体制も整いつつある。「お客様の悩みを“丸抱え”してサポートできるように活動したい」と意気込む。


北海道支店
〒063-0801 北海道札幌市西区二十四軒1条7-3-17
 (シャープ札幌ビル)
電話番号:011-633-1071
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外部リンク

Dynabook=https://dynabook.com/