フェイクニュースに負けない心を
「フェイクニュース」という言葉はいつしか人口に膾炙するようになった。明らかに誤りだと分かるものから、巧妙に仕込まれたものまで、誤情報、または偽情報が社会にはびこり、害をもたらしている。
著者は、フェイクニュースを「ウイルス」になぞらえ、人間に“感染”する心理的メカニズムや、伝染する仕組みを解説。その上で、対策としてフェイクニュースに共通した要素や構造、手口などを学習させる「プレバンキング」(事前暴露)が効果的だと説く。ウイルスワクチンが、病原体の毒性を低めたものであるように、あえてフェイクニュースにさらすことで「免疫」を獲得できるという。本書が示す手法は、現代社会が抱える病理の処方箋の一つになりうる。
フェイクニュースと聞くと、SNSやWeb媒体を思い浮かべる人も少なくないだろうが、新聞やテレビなどのオールドメディアも当然関係する。例えば、HPVワクチンに関するかつての報道は明らかに誤情報であり、接種率を激減させた。ほかにも“前科”は山ほどあるだろう。
フェイクニュースを報じた側に悪意はなかったとしても、結果的に社会を誤った方向に進ませる力がメディアにはある。メディアに関わる一人の人間として、著者が訴える内容を重く受け止めている。(無)
『フェイクニュースの免疫学 信じたくなる心理と虚偽の構造』
サンダー・ヴァン・ダー・リンデン 著
笹原和俊 監訳 松井信彦 訳
みすず書房 刊 4180円(税込)