人工知能の父の功績
AIは日進月歩で進化を続けている。文章作成をはじめとした業務遂行、自動運転やロボット制御を通じた現実世界への働きかけなど、昨今話題となっているAIのトピックは、ほんの数年前までは予想だにしなかったものばかりだ。こうしたAIの出現と可能性をいち早く示し、「人工知能の父」と呼ばれた数学者にアラン・チューリングがいる。ナチスが用いた暗号機「エニグマ」を解読した人物として有名だ。
本書ではチューリングの人生を詳細にたどりつつ、現在のコンピューターの基礎につながる仮想的な計算機「チューリング・マシン」をはじめ、チューリングが生み出した数々の独創的なアイデアを紹介する。
戦後になるとチューリングは「機械は考えることができるか」という問題を追求した。研究の対象は「計算」や「思考」といった抽象的な概念であったが、彼の天才性はそれらを具体的な処理方法に落とし込む点にあったようだ。機械の思考を判別する仕組みとして現在も用いられる「チューリング・テスト」はその最たる例と言えるだろう。
AIという言葉が生まれるより前に、人工知能とは何かを探ったチューリングの功績は、このAI時代を考える上で新たな古典として重要性を増しそうだ。(石)
『チューリングの哲学 人工知能と人間機械論』
高橋昌一郎 著
講談社 刊 1210円(税込)