2002年、日立製作所は徹底した「用途提案」に注力する。家庭用パソコンを専門に企画・開発するメディアステーション本部の大石志郎本部長は、「日本の家電パソコン、AV(音響・映像)パソコンが、独自性を発揮し始め、世界市場へ飛び出ていく時期に来ている」と、大きなビジネスチャンスが、今まさに目の前に来ていると指摘。テレビやビデオ、ステレオコンポ、DVD、デジタル放送チューナーの機能を全部パソコンに詰め込み、自分の部屋に、これ1台あればすべて事足りる──。日立は「家電」という切り口で、用途が明確で分かり易い家庭用パソコンの開発に力を入れる。

 大石本部長は、01年をこう振り返る。「企業向けパソコンの色を塗り替えて『はい、家庭用です』といった時代は、完全に終わった。電子メール以外、何に使ったらよいのかよく分からず、処理能力や記憶容量だけしか差別化要因にならないパソコンも終わった。パソコンが、もっと家庭の中に入っていくには、テレビやビデオデッキ並みに、何に使うのかの用途がはっきりしている製品に仕立てなければならない」と話す。

 CPUやウィンドウズのバージョンが、パソコン販売を引っ張っていく時代は終わったと、業界の誰もが感じている。ところが、一方で「メガヘルツ」「ギガバイト」「バージョン」といった数値が意味をなくしてしまうほどの強烈な用途提案が、確立しているわけでもない。

 「家電売り場では、テレビはテレビで、日立をはじめ、ソニー、松下の製品がずらりと並び、ビデオやステレオコンポでも同じだ。しかし、パソコン売り場を見ると、メーカー別のシマがいくつもあり、そのなかにごちゃごちゃといろいろな用途のパソコンが混載してあるケースが意外に多い。これでは、『メーカー名以外での差別化はできていません』と言っているようなもの。用途提案ができていないも同然」と分析する。

 例えば、これを(1)テレビやビデオ録画が強いAVパソコン系で、メーカーを問わず1つの売り場をつくる、(2)画像処理などクリエイティブに強いパソコンで、1つの売る場をつくる、(3)ほかにもステレオコンポ機能が強い、あるいはひたすら汎用的な性能が強いなど、それぞれの用途に合わせた売り場ができてもいいのではないか──。用途提案と口で言うのは簡単だが、実際にやるのは案外難しい。

 日立は01年の平均で、およそデスクトップが4%、ノートが2%の台数シェアだった。だが、日立のパソコンだけで見ると、01年度(01年4月-02年3月)は、台数で前年度比50%増の伸張、金額では同60%増の伸びに達する見通しだ。「昨年11月、12月の年末商戦では、前年同月比80%増の出荷台数に達し、主力上位モデルが10月26日の発売後、1か月弱の11月中旬に完売した。12月まで主力商品が続かず、販売機会損失に悩むほどよく売れた」と話す。

 平均単価も高い。BCNランキングでは、日立のデスクトップの平均単価は25万円前後に達しており、ほかの大手パソコンメーカーの同単価が20万円を切るなか、高い水準を維持している。02年度も台数・金額ともに前年度比50%増以上の伸びを目指す。

 02年のテーマは、「テレビの大画面・高精細化とパソコンとをどう融合させるか」だという。「インターネットの世界で認知されている画面は、パソコンのモニタか携帯電話の画面だけ。デジタル放送や光ファイバーの普及により、ブロードバンドによるデジタル放送時代には、テレビ画面も有力なスクリーン候補に捉えるべき」と考える。

 一方、「米国を見ると、日本ほど家電・AVとの融合が進んでいないように感じる。少なくとも02年、日本ではまさに家電・AVとの融合が、より一層進行するのは間違いない。光ファイバー、デジタル放送時代が本当に到来する03年以降、日本発の家電AVパソコンが本格的に世界市場で主導権をもつ可能性が高い。ただ、その時、まだ『パソコン』という呼び名が残っているかは分からないが…」と、大きなビジネスチャンスの到来を予測する。