店頭流通

萬松寺、「パソコン供養」 家庭用PCのリサイクルへ

2002/05/06 16:51

週刊BCN 2002年05月06日vol.939掲載

 名古屋・大須パソコン街にある萬松寺(ばんしょうじ、伊藤治雄住職)は、5月12日から使用済みの家庭用パソコンのリサイクルを始める。リサイクルは有料で、利用者は1台につき1000円を萬松寺に支払う。来年10月から家庭用パソコンのリサイクルが義務化され、リサイクルの責任を負うパソコンメーカーはデスクトップ型1台につき3000-4000円で回収することを決めている。今回、萬松寺独自のリサイクルは1台当たり1000円で、メーカー予定価格の3分の1以下と安い。萬松寺では「大須パソコン街活性化の一助になれば」と、街の振興事業の一環と位置づける。

 「萬松寺って何だ。何も聞いてないぞ」――。メーカーのリサイクル担当者は驚きを隠さない。萬松寺とは、大須パソコン街の“縁の下の力持ち”と言われる寺院。大須パソコン街の販売店協会「大須AIC」(月城朗会長=グッドウィル社長)とは、設立当初から協力関係にある。地元では「商売繁盛」の御利益があると多くの信仰を集める。今回実施する使用済みパソコンのリサイクルは、「パソコン供養」のサービス名称で5月12日から始める。デスクトップ/ノートの形態を問わず一律1000円(送料別)で引き取る。台数が集まるようであれば、毎月1回程度の間隔で開催する。

 回収したパソコンは、四国にある処理事業者の松下産業(愛媛県重信町、松下誠幸社長)および神山電子(愛媛県松山市、神山直昭社長)に引き渡し、金や銀、パラジウム、鉄などの素材を抽出して販売する。萬松寺は、回収窓口を担当し、実際の素材リサイクルは松下産業などが請け負う。来年10月から、パソコンメーカーが家庭用パソコンのリサイクル義務を負う。萬松寺の伊藤元裕副住職は、「メーカーより一足早く、しかも安い値段でリサイクルを始める。価値が高い金属類を抽出して販売すれば、1台1000円という安いリサイクル料でも採算が合う。また、経済産業省が示すリサイクル率の指標であるデスクトップ50%、ノート20%より高い水準を実現する」と、意気込む。パソコンメーカーは、デスクトップ1台3000-4000円のリサイクル料金を提示する見通し。もし萬松寺の思惑通り、「素材リサイクルおよび販売をしっかりすることで1000円でも採算が合う」ことが実証できれば、来年10月から始まるメーカーリサイクルの価格に影響を与えるのは必至。メーカー関係者は「なんでお寺が…」と、動揺を隠さない。

 萬松寺の委託先である松下産業では、「使用済みパソコンを月間5万台のペースで集めれば、設備投資分の費用を回収できる」としており、同社では萬松寺のほかにも、有力な回収窓口を開拓していく方針。萬松寺は今年11月、875台を収容する立体駐車場を併設した9階建ての「萬松寺ビル」を完成させ、IT関連の教育機関やネット企業の育成機関、各種商業店舗を誘致する。パソコン販売だけでなく、大須を名古屋IT産業の中心地にする構想だ。萬松寺では、「パソコン街を含む大須門前町の繁栄を推進すれば、巡り巡って民を救うという使命を達成できる」と意欲的だ。
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外部リンク

http://www.banshoji.or.jp/