店頭流通

無線LANサービス合戦 ヤフーBBはマックに、NTTコムはモスに、店内接続ポイントを設置

2002/05/13 17:00

週刊BCN 2002年05月13日vol.940掲載

 ヤフーBBがマクドナルドに、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)がモスバーガーに無線LAN拠点を陣取った!――。NTTコムが月額料金1600円と4月25日に発表すれば、ヤフーBBは5月7日に同1580円に実質値下げを発表。両社とも対抗意識を剥き出した無線LANサービス合戦だ。無線LANは半径数10㎡ほどしか電波が届かず、室内での利用が一般的だ。そこで両社は、ファストフード店内に無線LANの接続ポイントの設置を始めた。当面、設置個数の多さを競い合いつつ、利用者獲得に奔走することになる。

 日本マクドナルドの八木康行社長は、「まずは都内20店舗で実証実験をする。6月以降、順次ヤフーBB対応店舗を増やす。うまくいったら100店舗単位で対応店を増やす」と前向きだ。マクドナルドは全国に3800店舗あまりを出店。ノートパソコンを持ち込んで無線LANでインターネットに接続するのには、まさに最適な環境だ。米マクドナルドでも同様の無線LANサービスを散発的に始めているが、特定事業者と全面的に提携したのは「日本が初めて」(八木社長)という。

 ヤフーBBを統括するソフトバンクの孫正義社長は、「ほかの飲食店とも水面下で交渉中。すでに学校や図書館、公民館など公共施設に無償で無線LANの設置を進めており、完了すれば全国数万か所の無線LAN接続拠点ができる」と意気込む。ヤフーBBでは、無線LAN接続サービスを「BBモバイル」、ネット電話を「BBフォン」、ADSLを「ヤフーBB」と名付けた。「これらすべてのサービスは、すでに投資済みのIP基幹網で結ぶため、投資効率が良い」としている。

 ヤフーBBの基幹回線とマクドナルド店舗との間は、主にヤフーBBのADSL回線で結び、店内はBBモバイルとBBフォンが使えるようにする。BBフォンは、今後半年間は無料で、その後は4分10円で国内と米国に電話ができるようにする。マクドナルドの八木社長は、「ワールドカップサッカーの試合が行われる都市に出店する店舗を中心に、まずは最低でもBBフォンが使えるようにする。BBモバイルは、その後順次対応店舗を増やす」と、BBフォンに強い関心を示す。

 対するNTTコムも負けてはいない。ヤフーBBがマクドナルドなら、NTTコムはモスバーガーと提携。「今年6月までに東京23区内にある店舗150店でNTTコムの無線LAN接続サービス“ホットスポット”に対応する」(モスバーガー)という。NTTコムユーザアクセス部の舩橋哲也担当部長は、「10万人の利用者獲得が損益分岐点。年度内には、都内を中心に1000か所のホットスポットを開設する。2004年度には単年度黒字化を目指す」と意気込む。モスバーガーのほかには、プリンスホテルやコンビニエンスストアのミニストップなどにもホットスポットを設置する。

 ヤフーBBが最大転送速度毎秒11Mbpsの「IEEE802.11b」規格を採用したのに対し、NTTコムは、同毎秒36Mbpsの「同11a」規格にも対応した。このほか、企業などで使う仮想私設網(VPN)に対応するなど、かなり“重装備”の接続装置で臨む。装置1台あたり数十万円の金がかかる。一方、ヤフーBBは、「接続装置は極力安く抑える。高い装置で少しの人しか使えないより、安い装置で多くの人が使えた方が良い」と、NTTコムに比べ“軽装備”な機動性を重視する。

 価格競争もまだ終わっていない。BBモバイルは、ヤフーBBのADSLサービスの利用者に限り、月額わずか990円で無線LAN接続サービスを使えるようにした。NTTコムは、同社のプロバイダサービス「OCN」やマイラインとの「パック料金」で割安感を出す予定。

 ヤフーBBやBBモバイルは、ヤフーBBシリーズだけのサービスだ。だが、NTTコムのホットスポットはほかのプロバイダ利用者にも割引料金を適用する。「OCNとのパック料金ほど安くならないかもしれないが、ほかのプロバイダ事業者でも当社のホットスポットと組み合わせたパック料金を出せるようにする」(舩橋担当部長)と話す。
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