店頭市場ピックアップ

パソコン平均単価推移 夏モデル単価アップで5月は上昇傾向

2002/06/10 16:51

週刊BCN 2002年06月10日vol.944掲載

 大手パソコンメーカー各社が5月に発売した夏商戦モデルは、メモリ、液晶ディスプレイの価格高騰、円安という3つの要因により単価が上昇した。これを受けて、2002年5月のBCNランキングでは、ノートパソコン、デスクトップパソコンの両部門とも平均単価が上昇している。


 デスクトップは前月に比べ1859円アップにとどまっているが、ノートパソコンは6594円と前月の平均単価を大きく上回った。電子情報技術産業協会(JEITA)では、「部材の高騰は一時的なもの。年度全体で見ればパソコン単価が下がるのではないか」と、秋以降は単価下落との見方も出ている。

年末には下げ止まりか

 パソコン価格の値上げは、3月21日に米アップルコンピュータのスティーブ・ジョブズCEOが「Macworld Conference & Expo/Tokyo 2002」の基調講演で値上げを宣言したのを皮切りに、メーカー各社から発表になった。海外から調達する部品が多いパソコンは円安の影響を受けやすい。02年年初から円安が続いていたことで、「収益に影響が出てきた」という声がパソコンメーカー各社の首脳陣からあがっていた。しかも、01年夏から秋にかけて単価が大きく下落した液晶パネル、DRAMの生産調整を受けて単価が上昇。値上げ要因が3つ揃ってしまったことで、パソコンメーカー側でも、5月発売の夏商戦モデルの値上げに踏み切らざるを得なくなった。

 オープンプライスを採用しているメーカーが多いために、どの程度の値上げとなったのかはわかりにくいものの、売れ筋機種の単価は1万5000円から3万円程度の値上げとなっている。値上げ要因の1つである液晶ディスプレイについて、液晶ディスプレイベンダーでは次のように指摘する。「液晶パネルの単価が上昇している上、そのほかの部材の供給も不足気味。これは半導体の生産調整の影響というよりも、液晶ディスプレイに対するニーズに部材の供給体制が追いついていないことが原因」だと指摘する。そのため、当分は単価下落は見込めないという。その一方で、JEITAのように「値上げは一時的なもの。年度末にはパソコン単価は再び下落に転じる」という見方もある。

 実際にメモリ価格については、4月上旬にメモリメーカー各社はPC2100 DDR SDRAMの価格を引き下げた。「メモリ製造会社が絞り込まれたことで、PC2100 DDR SDRAMについては供給も安定し、価格も落ち着きつつある」とメモリメーカーでは指摘していた。今回のパソコン値上げの要因とはなっていないものの、店頭で販売されるCPUについては、6月に入りインテルのペンティアム4、日本AMDのアスロンの価格が大きく下落している。こうしたストリートプライスのパーツ単価は、時間をおいてメーカー製パソコンの単価に反映されることから、パソコンの単価上昇のひとつの歯止めとなる傾向と捉えることもできる。

 こうした異なる意見を考慮すると、パソコン平均単価は一時的に上昇するものの、その後も上昇が続いていくとは考えにくい。昨年6月から今年5月までの平均単価推移を見ると、8月、9月で大きく下落しているわけだが、今年は逆にこの辺りが山になって、年末商戦には一応の落ち着きを見せるのではないか。昨年年末に平均単価が上昇したのは、液晶ディスプレイ、マルチドライブを搭載したハイエンドモデルの人気が高かったため。それ以上の機能拡充は難しいことを考慮すると、これ以上の値上がりはさらなるパソコンの売れ行き不振を意味する。急激に平均単価が下落するとは考えにくいものの、02年夏をひとつの頂点に、下げ止まり傾向が出てくるのではないか。 (三浦優子)
  • 1