店頭流通

出足鈍い夏商戦 需要回復は秋以降か

2002/06/10 16:51

週刊BCN 2002年06月10日vol.944掲載

パソコンの需要喚起が課題

 夏モデルの出足が鈍い。主要パソコンメーカーや販売店の声を総合すると、パソコン需要の低迷はすでに底を打ち、徐々に回復基調にはあるものの、前年同期実績を上回るところまでには回復していない。また、夏モデルではパソコン本体の価格上昇傾向が見られることも、コンシューマの買い控えを招く要因となっている。家電販売店では、ワールドカップ特需による家電製品の需要喚起に失敗したこと、さらに冷夏が予測されるなかで目玉商品であるエアコンの売れ行きが懸念されるなどの不安材料があり、パソコン需要の回復に期待したいというのが本音なのだが…。

●「スポーツイヤー」は空振り?

 5月下旬、主要販売店を訪問したある大手パソコンメーカーの担当者は、販売店幹部から異口同音にこんな言葉を聞いたという。

 「パソコンの需要を、なんとか喚起してくれないか」

 家電量販店各店では、冬季オリンピック、ワールドカップと続く今年を「スポーツイヤー」と位置づけ、テレビ、ビデオといった商材の需要拡大を見込んだ。

 しかし、プラズマテレビなどは大幅な伸びを示したものの、まだ家電量販店の収益を支えるまでの材料にはなっていない。

 一方、主力製品である冷蔵庫、洗濯機などは、昨年3月のリサイクル法施行直前の駆け込み需要の反動が長期化している。

 「リサイクル法対象商品の反動による売れ行き低迷は、前年度下期まで続いていた」(コジマ・小島章利社長)という声もあるほどだ。

 日本電気大型店協会(NEBA)が発表した今年4月の家電販売実績は、前年同月比10.1%減の1964億円となり、10か月連続の前年実績割れとなった。

 しかも、今年は冷夏になるとの予測があり、家電量販店の収益の柱となっているエアコンの売れ行きも期待できないという声がある。

 売上確保の柱の1つに成長したパソコンの需要喚起をなんとか期待したい、というのが販売店の共通した声だ。

●慎重な姿勢の各メーカー

 4月から5月にかけて、大手販売店では5月下旬以降に発売されるパソコン新製品が、「メモリ」、「液晶」、「円安」といった値上がり要因の影響で軒並み2万円程度上昇することをアピールし、駆け込み需要を煽った。

 だが、需要を喚起するところまでは至らず、NEBAの調査でもパソコンは4月の実績値で前年同月比16.9%減という落ち込みを見せた。これは、5月に入ってからも同様で、依然として需要は停滞したままだ。

 パソコンメーカー各社は慎重な姿勢で生産計画を進めていることから、「夏モデルは潤沢な商品供給がままならない状態。日曜日には商品がなく、売り逃しといったことも発生している」(秋葉原の大手パソコンショップ)という声も出ている。

 主要メーカーがSCMを導入し、需要動向に合わせた生産体制を構築しているが、これがうまく稼働していないのも要因だ。一部メーカーでは、金曜日入荷分を火曜日の段階で再度数量調整が可能な仕組みにまでシステムを強化しているが、それでも品薄などの状況が起こっている。

 主要各社は、秋口以降の需要回復を見込んでおり、それまでは慎重な姿勢を見せることになりそうだ。7-9月は、前年実績が低かったことから、一部では前年を上回るとの見通しも出ているが、実態としては秋までは厳しい状況が続くことになるだろう。

(大河原克行●取材/文)
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