店頭流通

無線LAN市場、シェア争奪戦へ 規格固まり、来夏から本格普及

2002/07/15 16:51

週刊BCN 2002年07月15日vol.949掲載

 無線LANは、2003年夏を目途に最終的な規格が固まり、本格的な普及が進む見通しとなった。現在、無線LANは、周波数帯や通信速度別に複数の規格が乱立しているが、年内にはほぼ収束。来年以降はより強固なセキュリティの実装により、家庭から企業、街頭に至るまで幅広い普及の目途がつく。メルコをはじめとする無線LAN機器ベンダーは、来年以降の拡販に備え、販売体制の拡充に余念がない。アナログモデムやISDNターミナル以来の大型商材と言われるだけに、ベンダーや販社間の販売競争が一気に過熱するのは必至だ。

無線LAN市場、シェア争奪戦へ

 年内には、IEEE802.11g(以下11g)と同802.11a(同11a)のハイブリット(混成)アクセスポイントが登場し、さらに来年夏にはWEP(現行の無線通信暗号技術)に代わる強固なセキュリティを実装した製品が登場する目途がついてきた。これにより、乱立する無線LAN規格とセキュリティ上の問題がほぼ収束に向かうと同時に、本格的な普及期に突入する見通しだ。

 無線LANの互換性を認証する国際団体、ワイヤレスイーサネット製品互換性推進協議会(WECA、デニス・イートン会長)の調べによれば、2005年には世界の無線LANホットスポットは1万2000か所に増え、このうちアジア地区は5000か所と半分近くを占める見込み。セキュリティが保たれるようになれば、これまで普及が進まなかった企業向けの市場も広がる。無線LANで先行するメルコは、すでに日本ルーセント・テクノロジーのセキュリティシステムを採用し、法人向け拡販に向けた下準備を進める。

 プラネックスコミュニケーションズの高橋生宗・営業部担当取締役は、「無線LANは、徹底的に追求する」と、同分野での勝敗が今後の勢力図に大きな影響を与えるものと予測する。

 現在、無線LANは、周波数帯域が2.4GHz帯で通信速度11MbpsのIEEE802.11b(以下11b)が主流だ。だが、この規格の問題点は、速度が遅いこととセキュリティが弱い点にある。WECAの富樫浩氏(ソニー・バイオデスクトップコンピュータカンパニーネットワーク担当部長)は、「11bなどで使っているセキュリティ規格WEPは、簡単に破られることがすでに分かっている。個人で使う分にはかまわないが、企業では使えない」と警鐘を鳴らす。

 一方、5GHz帯を使い通信速度54Mbpsを出す11aは、11bとは互換性がない。欧州では、規制の問題で11aを使える目途が立っていない。そこで、11aの速さと11bの互換性と使用地域(国)を選ばない汎用性をあわせもたせたのが11gである。

 ベンダー各社は、今年に入り5GHz帯と2.4GHz帯のハイブリット機種の製品化を発表しており、メルコもこの7月から法人向けにハイブリットアクセスポイント(価格14万8000円)の販売を始めた。メルコの西岡孝行・ネットワーク事業部長は、「11bとの互換性を保つ条件さえクリアすれば、どんな製品でも出す。すでに11aと11bとの混成機は製品化しており、さらに年内を目標に11gと11aの混成機を出したい」と意欲的だ。

 メルコは、11gが表舞台に出る前の昨年10月の段階で、2.4GHz帯で通信速度22Mbpsを出す「エアーステーション2エックス」の製品化を発表(後に製品化断念)するなど、11g系の製品への食らいつきの早さは筋金入り。価格の面から、まずは法人向けの販売になる見通しで、来年以降、本格的な普及価格帯に入るものと思われる。牧誠社長は、「05年には年間数百万台の販売台数を見込める市場に成長する」と強気だ。メルコは直近で4-5万台の無線LANアクセスポイントを販売している。

 もう1つの問題であるセキュリティについて、WECAでは来年の夏以降、WEPに代わるセキュリティ規格AES対応製品の出荷が始まると見込んでおり、これによりセキュリティ問題も解決するものと予想される。
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