店頭流通

ソフトのダウンロード流通 コンテンツの充実が課題

2002/07/22 16:51

週刊BCN 2002年07月22日vol.950掲載

 コンピュータウェーブは、デジタルコンテンツの流通システム「ESDサービス」を使ったダウンロード販売に力を入れている。「ESDサービス」は、同社独自のシステム。ダウンロードのニーズが高いジャンルのソフトウェアを各メーカーから集める。また、ECサイト各社に対してダウンロード販売に必要なコンテンツや情報、システムを提供する。現在は、ソフマップや九十九電機、ニフティなどのECサイト約15社とリセラー契約を結んでいる。

 辻本和孝社長は、「ビジネスソフト市場を拡大していくためには、プッシュ型の販売が望ましい。だが、実店舗だけでは、売り場スペースや人員などの面でなかなか難しい。ECサイトと実店舗の連動を強化することが重要」と、「ESDサービス」の優位性を語り、「現在、ESDサービスでのソフト売り上げ比率は売上高全体の1%足らずだが、数年後に10%まで引き上げていく」と意気込む。同社では、このサービスを活用し、電子書籍のダウンロード販売事業も開始した。販売網がパソコン用ソフトの販売を目的として構築したものであるため、当面は、パソコン関連書籍やマーケティングデータの再利用が高い書籍、辞書などが中心になる。

 出版業界では、過去20年間に発行された書籍が約160万点あり、そのうち今でも流通している書籍は40万点程度だといわれている。残りの約120万点は絶版となり、書籍の印刷や発売が中止されているということになる。日本電子出版協会の長谷川秀記会長は、「既存の流通経路だけで市場規模を拡大するのは難しい」と語る。今後、コンピュータウェーブが「ESDサービス」のビジネスを拡大していくためには、「コンテンツを充実する」という課題がある。実際、辻本社長は、「ビジネスソフトのコンテンツを増やすことがダウンロード販売の活性化につながる」と強調する。

 日本電子出版協会・長谷川会長も、「新書を中心に1万点以上集まれば、新しい販売経路として確立するだろう。だが、まずは電子書籍のコンテンツを集めることが先決だ」と、ダウンロード販売の課題を指摘する。市場の成熟は、出版業界に限らず、ビジネスソフト市場も同様だ。BCNランキングによると、今年1―6月の6か月間、数量ベースで前年同期比4%減、金額ベースで同7%減。今年6月においては、数量ベースで前年同月比4.4%減、金額ベースで同16.4%減という結果だった。

 ショップでは、ソフトの売り場面積を狭め、売れるソフトだけを店頭に並べる動きが相次ぐ。少ない製品ラインアップしかもたないソフトメーカーに対する淘汰が少なからず起こっており、幅広いラインアップを擁するメーカーでも、店頭販売できるソフトの種類が以前と比べ少なくなってきているのが現実だ。ビジネスソフト市場の拡大には、店頭販売に加え、ダウンロード販売を取り入れることが必要となる。ダウンロード販売は、各ソフトメーカーやショッピングサイトなどが独自で行っているケースもあるが、「ダウンロード販売の流通経路を作り出す」という観点からいえば、ディストリビュータ・コンピュータウェーブの「ESDサービス」が典型的といえる。ダウンロード市場の確立に向け、ビジネスソフト業界、出版業界ともに、同社のコンテンツ集めに期待がかかる。(佐相彰彦●取材/文)
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