店頭流通

ブレイクするか? タブレットPC 新たな商材に期待高まる

2002/09/09 17:00

週刊BCN 2002年09月09日vol.956掲載

 タブレットPCがパソコン需要を喚起する――。メーカー各社、ショップともに、タブレットPCに期待を寄せる。メーカー各社は、マイクロソフトの「Windows XP タブレットPCエディション日本語版」を搭載したタブレットPCを11月7日から順次発売する。販売開始時期は、各社の思惑が交錯し、年末商戦や年明けなど様々。一方、ショップでは、タブレットPC見たさに来店者数が増えることに期待する。だが、タブレットPCは注目を集めることは間違いないにせよ、実需に結びついていくかは現在のところ不透明。顧客への用途提案が販売拡大へのカギとなる。(佐相彰彦●取材/文)

メーカー各社、相次いで新製品投入

■11月7日から順次販売開始 各社、発売時期はさまざま

 マイクロソフトは、タブレットPC向けOS「Windows XP タブレットPCエディション日本語版」を搭載したパソコンが、11月7日から順次発売されると発表した。

 タブレットPCの発売を表明したのは、NEC、ソーテック、東芝、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)、富士通、ペースブレードジャパン、ビューソニックジャパン、日本エイサーの8社。このうち、年末商戦に合わせた発売を計画するメーカーは、ソーテック、ペースブレードジャパン、日本エイサーの3社だ。

 ソーテックのマーケティング本部マーケティング部・山田雅彦部長は、「春から夏にかけてパソコン市場自体の販売が不振だったのは、消費者にとって新鮮味のある製品が少なかったから」と分析。「タブレットPCは、新しい需要を開拓できる商材」と語る。

 ペースブレードジャパンの高橋正敏社長は、「医療機関や製造現場などでタブレットPCの引き合いが高い」と話す。同社では、タブレットPCの開発を早くから手がけており、タッチパネル式の液晶モニタとワイヤレスキーボードで構成する「ペースブック」を、既存の「Windows XP」をベースに開発している。

 同製品は、液晶モニタ部分だけでタブレットPCとして使用できるほか、モニタとキーボードを専用ケースにセットすればノートパソコン、液晶モニタを立てればデスクトップにもなる。3形態のパソコンが1つになった「3in1(スリー・イン・ワン)パソコン」という位置づけで、9月19日に発売を予定している。価格は26万円前後の見通し。「量販店やソリューションプロバイダを通じて需要を開拓していく」と意欲を見せる。

 「Windows XP タブレットPCエディション」搭載のタブレットPCについては、「完全な『タブレットPC』として、その用途だけを求める顧客に販売していく」方針だ。

 日本エイサーでは、「タブレットPCは、ペンを使って手書きの文字や記号、絵を直接入力できるうえ、手書きデータをパソコンの中で整理・編集できるため、PDAと同様と思われがち。だが、PDAと異なり、OSがウィンドウズXPであることがポイントだ。ウィンドウズで動くアプリケーションなら、すべて扱うことができるので、PDAのような使用上の制約がない」(詹國良事業統括部長)ことを強調する。

 「企業のなかには、PDAの機能に限界があるので、PDAを活用したソリューションの導入に踏み切れないケースが多い。PDAで開拓し切れない需要をタブレットPCで取り込むことができる」と断言する。

 そのほかのメーカーでは、NECが年明け早々、残る東芝、日本HP、富士通、ビューソニックジャパンの4社は今後、発売時期を詰める予定だ。

 ソフトウェアメーカーでは、ヴァル研究所やクレオ、学習研究社、日本サイバーサインなど16社が「Windows XP タブレットPCエディション」対応のソフトウェアを開発することを表明した。

 ヴァル研究所では、「駅すぱあと」に手書き入力による駅選択や探索画面に直接メモを書き込める機能を12月に標準添付する。学研では、書き取りパッド機能を塔載した漢字学習ソフトを11月末に発売。クレオは「筆まめVer.13」用の手書入力できるアドオンソフトを11月下旬にダウンロード開始する。日本サイバーサインは、サインするだけでタブレットPCを使える個人認証ソフトを11月に販売開始の予定だ。

■実需につなげるための用途提案をできるかがカギ

 ショップの間では、「液晶テレビが登場した時、来店者数が増えた。消費者は、これまでにないまったく新しい商品が発売されると、実際に見てみたいと思うもの。その意味で、タブレットPCは、インパクトのある商品となる」、「デスクトップとノートブックに、タブレットPCという新しいカテゴリーが加わることで、販売の幅が広がる」と期待の声が挙がる。

 「最近のOSは、Windows 98以前と比べ、真新しくなったという印象がなかった。今回のOSは、こうした印象を覆すものだ」と指摘するショップもいる。タブレットPCへの期待は大きく、確実に来店者数が増えると予測する。

 だが、実際の販売に関しては、「今年の年末商戦にタブレットPC自体が爆発的に売れるとは限らない」といった見方は多い。来店者数の増加を生かし、来店者に対しタブレットPCに限らず、各種ニーズに合ったパソコンを提案し、パソコン本体自体の拡販に結びつけたいとの意図が強いからだ。

 これは、新しい商品に消費者が興味をもつことは確かだが、消費者にとってデスクトップやノートパソコンを購入する以上に、タブレットPCに魅力を抱くかどうかの見極めが難しいことの表れといえる。

 価格面では、新OS自体が既存OSよりも高いため、タブレットPC自体もデスクトップやノートに比べコスト高になることは必至。それだけに、コストに見合った値頃感がある商品としての提案力が必要となる。

 また、法人市場に関しても、決定的な提案力がなければ、需要開拓につながらない可能性は高い。

 タブレットPCの広がりについて、マイクロソフトでは、「完全にモバイルとして使われているノートパソコンが国内で100万台あるといわれている。初年度は、その市場の25%程度を増やしていくことを目指す。次年度からは、100万台、200万台と確実に販売台数が伸びていくだろう」(ニューメディア&デジタルデバイス本部マーケティング部・御代茂樹部長)と読む。

 タブレットPCにより、パソコン市場が盛り上がることは間違いない。

 ただ、これをいかに実需拡大に結び付けていくかは、提案力がカギを握っている。
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