店頭流通

記録型DVD 市場は急拡大シェア争いは渾沌

2003/03/24 16:51

週刊BCN 2003年03月24日vol.983掲載

 記録型DVDのシェア争いが混沌とした様相を呈している。市場が急拡大するなか、各社は初期シェアの確保により長期的なリーダーシップを握るべく死力を尽くしているが、現状ではシングルフォーマットの「DVD-R/RW」および「DVD+RW/+R」に加えて、ダブルフォーマットではDVD-RAMとDVD-R/RWを搭載した「マルチ」、DVD+RW/+RとDVD-R/RWとを搭載した「デュアル」が登場。4方式の併存時代に突入している。そこに「書き込み速度のスピードアップ」というテーマも浮上し、覇権争いの行方はまだ見えていない。

「複数フォーマット」と「速度」が焦点に

 記録型DVDは昨年絶好調の伸びを示した。電子情報技術産業協会(JEITA)の調べによると、2002年の国内出荷台数は164万台と、前年に対し389%の水準に達した。同協会の数字にはパソコンに内蔵される分も含んでいるが、アフターマーケットにおける単体ベースの販売台数も、BCNランキングによれば台数が同325.9%、金額が同248.4%という高い伸びを示した。

 また、JEITAでは05年の出荷台数について、日本は819万台、世界では5194万台と予測している。こうした急成長分野だけに、初期シェアの確保が長期的に優位な立場に結びつくのは明らか。従って、シェア争奪戦は苛烈さを増す一方だ。

 そんななか、まず勃発したのはフォーマット競争だった。先行した松下電器産業を中心とするDVD-RAMに対し、パイオニアを中心とするDVD-RW陣営が反撃。そこに、リコーを中心とするDVD+RWが加わる形で、3方式による覇権争いが展開されてきた。

 昨年前半には、最後発のDVD+RW陣営が急台頭し、流れは決まったかに見えた。しかし、年末商戦にかけてDVD-RW陣営は「DVD-R4倍速」という「書き込みスピードの高速化」で反撃に成功。さらに、松下電器は「マルチ」、ソニーは「デュアル」をうたった「複数フォーマット搭載機」を投入、マルチはジリジリとシェアを伸ばしつつある。

 複数フォーマット化は、(1)1回だけ書き込みのできるライトワンス(追記型)機能(DVD-R、DVD+R)の取り込み、(2)CD-R/RW機能の取り込み――というステップで進み、昨年前半の段階で主要ドライブメーカーはライトワンスおよびCD-R/RW機能の取り込みは実現していた。

 昨年後半に起こった新たな動きは、リライタブル(書き換え型)DVDフォーマットの複数搭載で、「DVD-RAMとDVD-R/RW」に対応した松下電器は「マルチ」と呼称。「DVD+RW/+RとDVD-R/RW」に対応したソニーは「デュアル」をうたった。 こうした複数フォーマット化に対し、パイオニアは「DVD-Rの4倍速化」で対抗し、一気にシェアをアップさせた。

 単一フォーマットの戦いから、「複数フォーマット」、「速度」という新たな争点が持ち込まれたのが昨年の年末商戦で、戦いの構図はさらに複雑さを増した。

 「将来、どちららに傾いてもいいように複数フォーマットを提供することがユーザーに安心感を与え、普及を早める」というのが、松下電器やソニーの主張。この点では一致しつつも、「プラス(+)とマイナス(-)は似たような規格。一緒にしてもあまりメリットはない」(松下電器)と片方がいえば、「DVD-RAMは高速化が難しい」(ソニー)と火花を散らす。

 一方、「複数フォーマットは、保険の意味しかない。コストアップの要因になるし、DVD-R/RWは最も優れているのでシングルで十分」と、パイオニアは反撃する。リコーもこの点は同じ立場だが、「DVD+RW/+Rこそ最高のフォーマット。速度で追い付けば再び巻き返す」と自信を見せる。

 書き込み速度の高速化については、各陣営とも「必然的な流れ」という認識では一致。とりわけ最もニーズが高い「R」については、「プラス」、「マイナス」陣営とも8倍速の規格策定に着手しており、今年の年末商戦投入に向けて走り出している。

 記録型DVDは「予想以上のスピードで成長」(各陣営)しているため、基本的には供給不足状態がまだ続いている。このため、量産体制の確立も急務となっており、各社の中国進出にも拍車がかかっている。

 各方式別シェアの推移は図の通りで、最近は小康状態を保っているが、リコーがこれから打ち出す巻き返し策によって、シェアは再び動き出すことになりそうだ。
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