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<BCN REPORT>マックワールドエキスポ開催 G5に注目集まる

2003/07/28 18:45

週刊BCN 2003年07月28日vol.1000掲載

 7月14日から18日まで、マックワールドエキスポが「マックワールド・クリエイティブプロ、カンファレンス&エキスポ」としてニューヨークのジェイコブ・ジャビッツ・センターで開催された。今回は、変更された名前の通りに、クリエイティブ分野のデモンストレーションやセミナーが中心で、出展企業もその分野に強い企業が集まった。来年以降は会場がボストンに移る可能性もあり、ニューヨークでは最後になるかもしれない今回のマック・ワールドでは、多くのマックファンが、異常な熱気を醸し出していた。(田中秀憲(ジャーナリスト)●取材/文)


ビジネス色強い展示会に

高性能ぶりをアピール

 今回のエキスポでは、発表されたばかりのパワーマックG5がやはり注目の的だった。アルミニウム合金を複雑な加工で成形した筐体は、シンプルな外観とともに、すっきりとまとめられた内部構造を実現し、芸術的でさえある。内部が見通せるスケルトンモデルを堂々と展示できるのは今回のG5がアップルのデザインチームの自信作だからだろう。

やはり主役となったパワーマックG5

 USBなど各種ポートは前面にあり、高性能パソコンに必ずついて回る発熱の問題を卓越したアイディアで解決した内部構造などが説明されるたびに、会場に集まった観客からは感嘆の声があがっていた。

 しかし、今回はG5そのものより、この高性能をいかに実際にツールとして使用するかに焦点が当てられていた。G5は、動画の編集や加工、緻密な音楽制作について、その高性能ぶりを繰り返しアピールしていた。パソコンとは思えないほどの処理能力は驚くばかりだ。特に音響編集環境の充実は、画像処理やDTP分野に加え、新たに得意分野を得ることになったようだ。

斬新なデザインの商品も

 一方、クリエイティブ分野に特化したマックワールドということで、ビジネス分野において重要な位置を占めるマイクロソフトやクォーク、ファイル・メーカーなど、いくつかの主要な企業は出展を見合わせている。

 しかし、アドビシステムズのフォトショップなどの重要なアプリケーション・ソフトウェアは、アップルのブースに並べられたG5上でデモンストレーションを行っていた。同様に音楽制作では主流を占める、パフォーマーやキューベースなどのプロフェッショナル向け製品も、アップルと共にデモンストレーションを行なっていた。いずれもアップルと各ソフトベンダーの密接な関係をうかがわせる。

 また、現在では事実上唯一のマック対応PtoP(ピア・ツー・ピア)サービスといえるライム・ワイヤー(ニューヨーク州ニューヨーク、http://www.limewire.com/)は、ファイル交換システムそのものの潜在的需要の高さと、近年の作業環境の多様化から、現在の状況を非常に大きなチャンスだと考えている。

 同社のグレッグ・ビルドソンCTO(最高技術責任者)は、ブース内に違法ダウンロードに対する注意書きを掲げながらも、「中小企業やフリーランスで働く人々のように、自身でサーバー構築が困難な環境下や、WiFiの普及により一般化されつつある外出先での作業などに、PtoPシステムは大きな可能性がある。今後もこの分野は急成長を続けるだろう」と述べた。

動画関連のソフトも多数展示

 高速なCPUと安定稼働が可能なOSによる作業環境の向上は、一般ユーザーにとってもメリットは大きい。動画像の編集や加工、テレビや映画の収録などが安価なiMacでもこなせるようになったため、ハッシュ(ワシントン州バンクーバー、http://www.hash.com/)のアニメーション・マスターのように、これらの分野のプロフェッショナルでなくても気になる商品が溢れて来る結果となった。

 マックワールドエキスポらしいといえば、レイン・デザイン(カリフォルニア州サンフランシスコ、http://www.igo4mac.com/)のiGoというiMac専用のスタンドだ。

レイン・デザインのiMac専用スタンド「iGo」

 これはシンガポール系アメリカ人の手による、シンプルでクオリティの高いデザインが特徴。機能的であるばかりでなく、何よりも一目で欲しくなるそのスタイルは、マッキントッシュ本来のコンセプトに近い。

 一方、ハーマンのブランドでパソコン用スピーカーを展開するJBL(カリフォルニア州ノーストリッジ、http://www.harman-multimedia.com)も、Encounter(遭遇)やInvader(侵入者)などと、SF映画のようなネーミングに似つかわしい斬新なデザインの商品群を並べていた。

マックと日常業務が接近

 IT分野のみならず、長く続く米国経済全体の不況。毎年狭くなる会場スペースや、減る一方の出展企業。以前のように高価なノベルティを配るところも見あたらず、マックワールドのような展示会は停滞するばかりであるかのようだ。ラスベガスで行われるコムデックスなども、衰退の一途をたどっているかのように報じられている。

 しかし、今回のマックワールドを見ると、パソコンの高性能化と各種環境の充実は、業務用や家庭用を問わず、近い将来にはパソコンのあり方が大幅に変わることが予想され、現在は雌伏の時期ではないかと考えられる。

 エル・ガトー(カリフォルニア州サンフランシスコ、http://www.elgato.com/)のEyeTVのように、テレビ番組を予約録画・編集するという作業が、ビデオデッキやハードディスクレコーダではなく、パソコン上で行うことが一般的になる日は近いかもしれない。

 iPodのようにパソコンとの連携が前提の娯楽機器類も珍しくはない。ようやく現実の業務に耐えるようになってきたパソコンの、今後のあり方が問われるかのような今回のマックワールドエキスポだった。

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