店頭流通

パソコンの販売動向 冬商戦、幸先良いスタート

2003/10/20 16:51

週刊BCN 2003年10月20日vol.1011掲載

 パソコン冬商戦が幕を開けた。序盤戦は前年同週を上回る販売が続き、まずまずの滑り出しとなっている。今年は、個人向けパソコンリサイクル制度開始(10月1日)前の駆け込み需要の反動が懸念されたが、結果的にはその影響も受けずに済みそうな気配だ。メーカー各社が夏商戦モデルの在庫を絞り、なおかつ9月にリサイクル費用を含んだ冬商戦モデルを発売するなど、市場の混乱を回避したことが大きい。10―12月については、専門店や家電量販店の大半が「市場の復調傾向に支えられ前年を上回る」とみている。

10月もプラスで推移

 BCNランキングによると、9月29-10月5日におけるパソコン販売は、デスクトップが前年同週比101%、ノートが同103%となった。10月6-12日は、デスクトップが同102%、ノートが同105%と、2週連続で前年を上回っている。

 パソコン専門店と家電量販店では、「7月から需要が回復基調にあり、徐々に販売が伸びている。この流れでいけば、通期で前年を上回る販売台数になる」、「夏商戦本番には手応えを感じる週があった。パソコン市場は飽和状態にあるものの、その分、買い替え需要が期待できる。冬商戦でも本番の12月に買い替え需要を中心に販売が拡大する」などの声が挙がっている。

 今年は、個人向けパソコンのリサイクル制度が10月1日に開始されたことにより、「家電リサイクル法と同様、駆け込み需要の反動があるのではないか」との見方があった。家電リサイクル法では、施行直前の2001年3月後半の約2週間に、対象製品の家電4品目(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、クーラー)の販売が倍増。その反動で、4月以降は前年割れという事態が長期にわたって続き、業界は大きな打撃を受けた。

 しかし、パソコンの場合、10月以降も前年同週を上回る状況が続いており、リサイクル制度による影響はなかったとみていいだろう。その要因としては、メーカーが夏商戦モデルの出荷を絞り込んだことに加えて、リサイクル制度に対応した冬商戦モデルを9月に前倒しして発売したことが大きい。駆け込み需要の混乱を回避し、9月の販売台数を下げることなく、冬商戦に突入した。

 10-12月については、「テレビチューナーや記録型DVDなど、目新しい機能ではないもののAV(音響・映像)に対するニーズは根強く、付加価値機能として一層浸透していく」と見るショップが多い。「急激な伸びはないにしろ、前年同期の販売台数を確実に上回る」との予測が大半だ。

 主な調査会社でも、冬商戦の動向に明るい見通しを示す。BCN総研は、「在庫に関しては、昨年と比較し夏商戦から冬商戦へのモデルチェンジがスムーズだったメーカーが増えた」とし、円滑な在庫調整が販売機会を逃さないことにつながっていると見て、「1ケタの前半だが、前年同期を上回る」と分析する。

 マルチメディア総合研究所でも、「消費者のIT機器投資は戻りつつある。加えて、液晶テレビの拡大により、テレビチューナーを搭載したデスクトップと液晶モニタの需要が一層増えていく。10-12月は、前年同期比で1ケタ増となり、決して下回ることはない」(中村成希・ITプロダクツ研究グループ長)と予想する。

 長らく需要低迷にあえいだ個人向けパソコン市場だが、家電リサイクル法施行時のような反動減も表面化せず、久々にこの冬はホットな商戦が展開されそうだ。
  • 1