秋葉原は今

<秋葉原は今>20.石丸、新店舗戦略が奏功

2006/04/10 16:51

週刊BCN 2006年04月10日vol.1133掲載

 大規模な再開発により、街の様相が一変した秋葉原には、“パソコンマニア”や“アニメおたく”に加え、家族連れや女性、高齢者などかつての電気街客でなかった層も訪れるようになった。こうした客層の変化に合わせて、品揃えや店舗のイメージ変更が必要になってくる。

 多くのショップが店舗の新コンセプトを模索しているなか、大手家電量販店の石丸電気は1店舗の取扱商品を1カテゴリーに絞った戦略で効果を上げ始めている。同社は、カテゴリーを家電や情報通信機器、AV(音響・映像)、ソフトウェア、ゲームなどに分け、昨年3月から1年間かけて各店舗を「専門店」としてスタートさせた。

 いち早く専門店化を実施したのは情報通信分野。昨年3月10日、パソコンや周辺機器の販売店「パソコンタワー」を移転し、情報通信機器の専門店「パソコン本館」としてリニューアルした。同店は、地上3階建てで、かつてのパソコンタワーよりも手狭。商品の展示数は減ったものの、「利益率はかえってアップした」(寒河江勤・パソコン本館店長兼営業本部情報統括)という。

 パソコン本館がオープンする以前は「本店」や「駅前店」などパソコンタワー以外の店舗でも情報通信機器を販売していた。「ITとAVの融合が進むにつれ、各店ともパソコンやAV機器を販売するようになり、店舗コンセプトが似通ってしまった」と振り返る。同社の店同士で客を奪い合う状況が続いたこともあり、「自社内で低価格を競い合うような無益な商売を行わないため、情報通信関連に特化した専門店を設けた。そのことが利益率の向上につながった」わけだ。

 また、専門店として再スタートを切って以来、パソコンの使い道を聞き出すなどの接客を徹底することで、「粗利が高い周辺機器も一緒に売れるようになった」ともいう。

 「パソコンの使い道を尋ねて最適な機種を勧めるなど、接客をきちんと行うのは販売の基本。しかし最近では他のパソコン専門店がやっていないからか、うちのやり方はお客さんに好評だ。パソコンの粗利が低いからといって接客をおざなりに済ませているのでは、販売のチャンスをみすみす逃していることになる」と、寒河江店長はみている。(佐相彰彦)
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