臨界点

インターコム 代表取締役社長 高橋啓介

2006/05/15 18:45

週刊BCN 2006年05月15日vol.1137掲載

 「BCN AWARD」通信ソフト部門6年連続最優秀賞を獲得したインターコムの業容変化が進んでいる。通信だけでなく、セキュリティやユーティリティといった分野を強化。一般消費者向けではなく法人向け製品を拡充するなど、高橋啓介社長は大きく舵を切り始めている。“通信のインターコム”とは呼べないほどビジネスを進化させた国産老舗メーカーの変貌に迫る。 木村剛士/取材・文 ミワタダシ/写真

個人市場よりも法人を重視 商品は自社開発に特化

 ――通信ソフトのイメージが強いが、他ジャンルにも積極的だ。

 「FAXソフト『まいと~く』の販売実績が高いことから、通信のイメージが強い。だが、ここ数年は通信のほかセキュリティとユーティリティ関連ソフトに力を入れている。売上高に占める通信関連製品の売上高は約7割と依然高く、中核であることは間違いない。ただ、今後は他の2ジャンルが強化ポイントだ。とくにセキュリティは、全売上高のうち現状の10%台から30%にまで高める」


 ――主軸の通信や強化点のセキュリティでは、一般消費者向けというよりも、法人用途に適した製品を増やしている印象だ。

 「戦略的に法人市場の売り上げを増やそうとしているから、当然だ。一般消費者と法人で売り上げを区分けすると、3年ほど前まで比率は半々だった。しかし、今では、法人向け製品が計画通り成長し、一般消費者向け製品の売上構成比率は15%まで下がっている。今後も法人市場を重視する方針は変わらない」

 ――一般消費者向け製品はやめるのか。

 「やめない。店頭で自社製品を並べておくことは、会社の知名度やブランド力を高めるうえで、非常に大切だ。ただ、一般消費者向けソフト市場は厳しい環境で、利益確保が難しい。今後も飛躍的な成長は見込めないだろう。そのため、DVDコピーソフトなどの一般消費者にしか適さないソフトは縮小させていく。一般消費者向け製品で今後力を入れるのは、HDDのバックアップなど業務でも利用できる、つまり法人市場にも横展開できるソフトだ」

 ――一般消費者向けソフト市場はなぜ低迷期から脱することができないのか。

 「私見だが、ユーザーは特別なアプリケーションソフトを求めていない気がする。インターネットやメールを使えれば十分という層が大多数なのかもしれない」

 ――現在のラインアップでは、自社開発製品と、他社から調達して製品化する場合の2パターンを併用している。今後もこの方針は変わらないか。

 「自社開発に特化する。今後の新製品で他のソフトメーカーが開発した製品を調達して販売することはない。自社の技術者で開発したほうが品質は高く、日本の顧客のニーズを迅速に反映できる。何より、開発者が海外製品のローカライズ業務などよりも、開発者が楽しんで仕事ができる。高い技術力を維持することにもつながる。今後製品化するソフトは自社開発だけだ」

 ――今後の新製品計画は。

 「今年6月にセキュリティ分野を伸ばすための中核製品として情報漏えい対策ソフトをリリースする。開発に2年かけた。当初の予定では、昨年の今頃にリリースするはずだったが、品質と多機能を追い求めた結果、1年延びてしまった。だが、その分、他社が持っていない機能を付加することができた。詳細はまだ話せないが、かなりの競争力を持っていると自負している」

 ――どう売っていくのか。

 「まずは直接販売で攻める。通信関連ソフトの顧客にアプローチしていき、実績を出す。その後、代理店を募り、間接販売モデルを始める計画だ。市場では後発だが、機能では他社を上回っている自信があるし、ソフト開発を20年以上手がけてきた技術力もある。十分勝算はある」

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■6年連続トップの王者も価格下落が悩み

 インターコムは通信ソフト部門で圧倒的に強い。BCNランキングの年間販売本数は、2000年から05年まで6年間一貫して首位。直近のBCNランキング週次データ(4月17-23日)でも、ベンダーシェアは39.9%を獲得し、2位のメガソフトに16.4ポイントの差をつける。

 94年に初期バージョンを開発してから10年以上、継続的にバージョンアップを重ね、通信分野ではゆるぎないブランド力を持つ。高橋社長は、その強さの秘訣を「日本人の好みに合わせた機能を持つこと」と分析。自社開発の優位性を主張している。

 ただ、一方で製品単価の下落に悩まされている。94年発売の初期バージョンの価格は2万8000円だったが、現バージョンでは、4分の1の約7000円で販売されている。

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