臨界点

メディアドライブ 執行役員 パッケージ事業本部本部長補佐 谷古宇 豊文

2006/07/31 18:45

週刊BCN 2006年07月31日vol.1148掲載

 名刺管理用のOCRソフトウェア市場は、メディアドライブが切り開いた。個人情報漏えい防止の機運が高まり、同社にはさらに“追い風”が吹いている。ネットワークを介し携帯電話で名刺を閲覧できたり、名刺情報から地図や路線を検索できる機能など、技術は進歩し続けている。最新版は、セキュリティ機能などを強化したことで、ライセンス数が前バージョンの30倍の売れ行きという。同市場は競合会社が相次ぎ参入し、競争が激化しているが、「長年かかって築いた独自のOCR技術力」を生かし、他社の追随を許さない。 谷畑良胤 取材/文 清水タケシ 写真

名刺管理OCRソフトのパイオニア 独自に築いた技術は、追随を許さない

 ――OCRでは、高い技術力を誇るメディアドライブでさえ、発売当初は苦戦した。

 「名刺管理用のOCRソフトは12年前に出した。初期版は名刺を1枚ずつOCR用スキャナに差し込むタイプで価格は4万9800円。全然売れなかった。だが、『絶対売れる』という信念を持っていたので、試行錯誤して初期版から3年後に『e .Contact for Win』との製品名にし、複数枚の名刺を差し込めるタイプに変更した。5年前には、現在の『やさしく名刺ファイリング』という製品名にして、OCR用スキャナ付きで1万3800円に価格を下げたところ、かなり出た」

 ――売れ始めた理由は何か。

 「企業内個人ユーザーが購入できる価格帯になったことが大きい。ビジネスマンは、誰しもが名刺管理をこういう形でやりたかったのだろう。価格を下げるには、大変な思いをした。当初は、国内メーカーのスキャナを付けていた。しかし、安いスキャナが国内になく、台湾メーカーと共同開発して低価格を実現した」

 ――「やさしく名刺ファイリング」は、“爆発的”に売れて競合の参入も相次いだ。

 「OCRの専業メーカーとして長い間に築いた信頼があり、蓄積した技術がある。当社のOCRは、運転免許証を読み取ったり、国内プリンタメーカーにもOEM供給するなど、数々採用されている。だから、トップを維持できている」

 ――名刺をOCRで認証する技術というのは、かなり進歩しているのか。

 「名刺は情報量が少ない割に認識するのが難しく、ある段階から100%の認識率でなくても済む方法を考えた。OCRに加え、名刺の画像を残す機能を付加したところ、ユーザーに受けるようになった。そうすると、名刺に記載したメモを残せる。認識率自体も、当社調査で4-5年前の85%から、現在は95%にまで高まっている」

 ――NTTコミュニケーションズの携帯電話向けストレージサービス「cocoaギガストレージ」との連携も開始した。

 「商品をバージョンアップするうえで認識率を上げたり、使い勝手を高めるなどを進めていた。だが、名刺を読み込んだあと、実際に仕事で使えないと意味がないと感じていた。そこで、名刺から地図を参照できたり、路線を検索できる機能を加えた。そんな折、個人情報漏えい防止が叫ばれ、名刺管理を徹底するニーズが高まって、当社に“追い風”が吹いた。営業担当者などは、名刺を持ち歩かないと仕事にならないが、携帯電話で安全に名刺を閲覧できたら便利だと発想した」

 ――「cocoaギガストレージ」との連携の影響は。

 「『やさしく名刺ファイリング』が出た当時ほどの勢いはないが、徐々に伸び、確実に増えている。企業向けとしては、3月に出した企業サーバー向け『やさしく名刺ファイリングServer』も好評だ」

 ――名刺管理用のOCRはどう進化するのか。

 「キーワードは、名刺を守ること。しかし、守りが堅いと使えなくなるので、より使い勝手のいいように提供すること。現在の『同v.7.0』は前バージョンに比べ、ライセンス数が30倍に伸びた。セキュリティ機能などを強化したことが奏功した」

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■老舗の影響力で、シェア3位

名刺管理ソフトウェアは、BCNランキングの「文書管理ソフト部門」に属する。同部門のうち、OCR機能をもつ小型スキャナ付き名刺管理ソフトを出すメーカーとしては、メディアドライブに加え、エー・アイ・ソフトやソースネクスト、トリスター、富士通ミドルウェアなどが乱立している。

 メディアドライブの最大のライバルはエー・アイ・ソフトだ。6月1か月間では、機種別販売台数で26位にエー・アイ・ソフト製品、29位にソースネクストの1980円ソフト、32位にメディアドライブの「やさしく名刺ファイリングProv7.0」がランクインしている。

 しかし、同部門のベンダー別シェアでは、同ソフトが貢献し、メディアドライブがシェア10.9%で3位。ソフト市場全体が縮小傾向にあるなか、元気のある同部門で“老舗”の影響力を生かし健闘する。

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