臨界点

BSLシステム研究所 代表取締役社長 小野秀幸

2006/11/20 18:45

週刊BCN 2006年11月20日vol.1163掲載

 「挫折させない」--そんなコンセプトで会計ソフトウェアを中心に業務ソフトを開発・販売するBSLシステム研究所。簡単で徹底したサポートを売りに中小企業や個人事業主へ市場を拡大し、BCNランキングでシェア2位の座を不動なものとしている。これまで「単式簿記」の製品が主体だったが、最近では「複式簿記」にも参入。店頭市場では、首位の弥生を脅かす唯一の存在として、地道に上位を目指す。 谷畑良胤 取材/文 ミワタダシ 写真

「挫折させない」製品を市場に投入 簡単操作・サポートで浸透させる

 ――大手量販店市場の業務ソフト分野で、シェア2位を維持している要因は。

 「国内企業のうち、大企業は数%。大多数は中小企業だ。この400万以上の中小企業は業務ソフトを利用する可能性がある。ただ、ほとんどは、専門のシステム担当が不在。当社の『らくだシリーズ』や『かるがるシリーズ』はこの層に特化したものだ。ソフトが簡単で、常にサポートが受けられ、ユーザーを“挫折させない”ことに焦点を当てて商品展開をしてきたことが、受け入れられている最も大きな要因だろう」

 ――多くの業務ソフトは「簡単」をうたい文句にしているが、違いは何か。

 「ひと言で言うと、あえて最大公約数の機能に絞ったこと。絞ることで、利用方法が『明快』になるという考え方。それにより、機能に不足を感じるユーザーもいるが、大勢はそれで『使いやすい』と感じてくれている。100%のユーザーに満足してもらうというより、ターゲットユーザーに満足感を得てもらうことを重視している」

 ――税制改正や制度改正が相次ぎ、業務ソフトを利用する層に変化はあるか。

 「基本的なユーザー層に変化はない。ただ、5月に『会社法』が施行され、個人企業が増えている。青色申告していた個人事業主が法人化しているためだ。今まで青色申告ソフトの利用者が、これを機に手作業から、業務ソフトを導入して会計処理する企業が徐々に多くなっている」

 ――会計ソフトで地盤を築いているが、青色申告ソフトの参入は後発だ。

 「会計ソフト同様に青色申告ソフトも、単にシェア獲得を狙っているわけではない。青色申告ソフトを利用するユーザーは、より会計処理に使う時間が不足している。そこで、簿記の知識を必要とせず、『単式簿記』で利用すれば“挫折”が少なく、当社はそこに特化した」

 ――「複式簿記」の青色申告ソフトも出している。

 「『複式簿記』は、“挫折”しやすいので商品化したくはなかった。しかし、5年前、『複式簿記』でも『らくだシリーズ』の良さを引き出せる自信がついたので、昨年から『複式簿記』に対応したソフト『青色申告らくだプロ』を出した」

 ――業務ソフトの店頭シェアは、堅実に2位の座を確保しているが、今後の目標は。

 「シェア1位を求めると、今より無理をする必要が出てくる。その無理は、品質やサービスの低下につながりかねない。満足度を落として1位になるのではなく、顧客の満足を得た結果、シェアが伸びるのが望ましい」

 ――新アイテムに参入することはあるのか。

 「新アイテムは自然発生的に生まれる土壌がある。今のリソースをうまく売り上げ増につなげるために、新分野への進出は必要。ただ、ともすると、屋台骨が揺らぐ可能性があるので、それをせずにやっていく。畑違いのことをせず、基本理念からブレずに発展していきたい」

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■シェア2位はBSLの“指定席”

 店頭市場の業務ソフト分野は、BCNランキングの10月1か月間(10月1-31日)によると、本数シェア1位が弥生で28.7%。BSLシステム研究所は、給与ソフト「給料らくだプロ」が健闘し、首位に約15ポイント差の2位(13.6%)に位置している。この2位はここ2-3年の“指定席”となっている。

 2年ほど前に日本デジタル研究所(JDL)が店頭から撤退し、ソリマチの勢いが減速。それ以降、上位陣の順位に変動はない。しかし、今年5月、マグレックスが開発した会計ソフトをソースネクストが1980円で発売。一時は順位変動が予測されたが、現在シェア8.9%で4位と勢いは感じられない。

 申告ソフト分野では、弥生が本数シェア55.1%でダントツの首位。BSLは9.5%で4位につけている。

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