店頭流通

池袋が“電気街”に化ける!?

2007/08/27 18:45

週刊BCN 2007年08月27日vol.1200掲載

ヤマダの攻勢 迎え撃つビック

超大型店の進出で活況 ビックの知名度、揺るがず


 ヤマダ電機が東京・池袋地区に「LABI池袋」をオープンしてから1か月余りが経過した。同地区はビックカメラの本拠地で確固たる知名度があるため、以前から家電の購入目的で訪れる消費者が多かったが、ヤマダ電機の進出でますます活気を帯びているようだ。ビックカメラとヤマダ電機という大手家電量販店が集積したことから、池袋地区は“家電の街”として消費者の意識に根づきそうだ。(佐相彰彦●取材/文)

■滑り出し上々のヤマダ 来店しやすい環境に力点

 今年7月13日にオープンした「LABI池袋」について、ヤマダ電機の営業本部で営業総合企画室長を務める小林辰夫・常務執行役員は「(オープンから1か月程度が経過した8月初旬で)予想以上に来店者が訪れている。幸先がよい」と自信をみせる。

 ヤマダ電機にとって都市型店舗がコンセプトの「LABI」を出店したのは大阪・難波、宮城・仙台に続く3店舗目となる。同社が得意とする広大な土地に1フロアあたりの面積が広い2-3建ての店舗と大型駐車場完備の郊外型店舗と違い、多層階での店舗展開。しかも今回は若者や会社員、家族、高齢者と、さまざまな世代が多く訪れるJR池袋駅東口前という都心部への出店とあり、「来店を促すため、できるだけ多くの商品を展示しながら広い通路を確保している。ちょっと一息入れるための休憩用ベンチの設置など、誰でも気軽に来店しやすい環境づくりに力を入れた」としている。

 販売促進策としては「体験コーナーを充実させた」という。パソコンや関連機器、デジタルカメラなどのデモコーナーに加え、音にこだわるユーザー向けに高価格帯のヘッドフォンで携帯オーディオプレイヤーを試聴できるようにしたり、ドライヤーなど日用品は全機種を試せるようにしている。

■ビックカメラはリニューアル 来店者の声を最大限に生かす

 一方、池袋が本拠地のビックカメラでは「池袋本店」を6月29日にリニューアルオープンした。家電機器フロアで展示商品数を変えずに通路を広くしたほか、こだわるユーザー向けの体験コーナーや、幼児を抱える家族向けに玩具のアイテム、高齢者を中心としたデジタル機器の初級者向け相談カウンターなどを充実させた。松浦竜生・池袋本店/パソコン館池袋本店統括店長は、「当店は、“池袋のシンボルマーク”の1つと自負している。その名に恥じない店に仕上げた」としている。

 なかでも、体験コーナーや商品説明を交えたデモ、相談カウンターについては「お客さんの声を最大限に生かした」。3階のステレオ売り場に設置した体験コーナーでは、来店者が持参したCDを多くのステレオやスピーカーと組み合わせて聴ける。「当店でしかできないこと、当店にしか置いていない商品を求めて訪れるお客さんが多いため」という。デジタル家電のデモコーナーでは、休日になると専門スタッフが家の間取りに適した薄型テレビの大きさや用途に合わせたDVDレコーダーの紹介を行っている。白物家電のフロアでは、「まとめ買いご相談カウンター」で高齢者や一人暮らしの学生などを対象として予算に応じて最適な商品を購入できるアドバイザーを配置した。

■大手の出店で相乗効果に期待 街の来訪者増に寄与していく

 ヤマダ電機「LABI池袋」の出店場所は、ビックカメラの「池袋本店」と同じ通りに面しており、「パソコン館池袋本店」とも目と鼻の先だ。今回、ヤマダ電機が池袋に進出したことで“大手量販店による駅前店と郊外店の生き残りをかけた戦い”の様相を呈しているようにもみえる。しかし、「どこでも競争は繰り広げられている。池袋地区に限ったことではない」(ビックカメラの松浦統括店長)、「東京のシェアが低く、まだまだ開拓の余地がある。(池袋が本拠地の)ビックカメラさんに胸を借りるつもりで成長していく」(ヤマダ電機の小林常務執行役員)というのが両社の見方だ。池袋は、駅前の西武や東武など百貨店をはじめ、水族館や展望台などがある「サンシャインシティ」、ホテルメトロポリタン、飲食店など、都心のなかでも来訪者が多い街で知られる。しかも、JRで山の手線や埼京線、地下鉄の東京メトロで丸の内線や有楽町線、東武東上線、西武池袋線など鉄道のターミナル駅として乗降客が多い街でもある。家電量販店だけがメインの街ではないということだ。

 そのため、「街が一段と活性化することに少しでも貢献していきたい」(ヤマダ電機の小林常務執行役員)、「当店は30年弱の歴史があり、親子2代にわたって来店してくれる家族もある。こうした“ファン”を一段と増やす」(ビックカメラの松浦統括店長)などという考えを示している。

 各量販店による同地区での店舗展開で、家電購入者増という相乗効果が出ることが望ましい。実際、ビックカメラでは「(ヤマダ電機の進出で)この夏は、年末商戦並みの売り上げを維持している」(松浦統括店長)。ヤマダ電機は、「競合店と切磋琢磨する」(小林常務執行役員)。これまでも、ビックカメラが出店していたことから家電購入の来訪者が多かった。それに加えて、ヤマダ電機の出店で大手量販店が軒を連ねる“家電購入に適した街”として知名度が高まる可能性を十分に秘めている。
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