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トレンドマイクロ、宍倉豊ディレクター

2008/05/19 18:45

週刊BCN 2008年05月19日vol.1235掲載

 3月、トレンドマイクロはセキュリティソフトの月間シェアNo1を獲得した。月ベースのメーカー別シェアで、宿敵シマンテックに勝ったのは直近3年間で初めて。店頭営業を指揮する宍倉豊の表情には自信がみなぎる。それもそのはず、自身が打ち出した戦略が今回の逆転劇につながったからだ。

「機能」ではなく「使い勝手」を

―トレンドマイクロ 営業統括本部リテール・OEMセールスグループ
宍倉豊 ディレクター

 2007年10月に発売した新版「ウイルスバスター 2008」。当時担当から離れていた宍倉は、新製品の打ち出し方に違和感を感じていた。パッケージや広告の機能紹介メッセージで難解な表現が多かったからだ。「Webレピュテーション技術」「不正変更の監視機能」など、理解しにくい言葉が並んでいる。当時の担当は、競合との違いを示すポイントはあくまでも機能だと判断。詳細な機能解説をPR要素に選んでいた。

 「法人向けならまだしも、コンシューマ向け製品で詳細な機能のメリットを伝えるのは難しいのではないか。ユーザーが求めているのは、ストレスを感じない操作性にあるはず」。宍倉はそう感じていた。担当に戻った直後、大幅なテコ入れに動く。

 マーケティングと営業がタッグを組み、パッケージデザインと広告、Webサイトの変更プランを練り直した。その際、複雑な表現や説明は徹底的に排除。逆に、「軽快・簡単・安心」という新キャッチフレーズを前面に押し出す。「高度な機能」から「使い勝手の良さ」にメッセージを変えたわけだ。

 このプランをもとに3月、首都圏では山手線や京浜東北線などの車両すべてに広告を展開、シマンテックが強い名古屋地区ではテレビCMも放映して対抗した。10月の製品発表時よりも多額のPR費を投じた異例の施策だった。

 シェアは即座に跳ね上がり、その月のトップの座を奪った。ただ、宍倉は今回の結果に安穏とする様子をみせない。「シェア33%で年間でもNo1を獲る」と目標を大きく定めているからだ。年間シェアNo1を堅持するシマンテック、成長率が最も高いソースネクストを抑えるのは容易なことではない。トレンド在社約9年、店頭営業のベテランとしてそれは熟知している。それだけに「手綱を緩めている暇はない」というわけだ。

 「1-2年前に比べれば、市場の成長は鈍化している。ただ、セキュリティソフト未体験のユーザーもまだまだ多い。この層にアプローチするには分かりやすいメッセージしかない」。(文中敬称略)(BCN・木村剛士)

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