大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>125.地域専門店が厳しい環境でも成長する理由

2008/12/08 16:51

週刊BCN 2008年12月08日vol.1263掲載

 大手家電量販店に年末商戦の需要動向を聞くと、かなり慎重な見方であることがわかる。

 PCに関しては、良くて前年並みという見方をする一方、薄型テレビについても、2桁増の成長を期待するものの、一時期のような大幅な成長は見られないと、やはり慎重な需要動向を予測する。

 既存店全体では、前年実績並、場合によっては前年割れという厳しい結果になるのではとの声も聞かれるほどで、景気低迷、株価下落といった経済環境の悪化は、消費者の財布の紐をきつく縛っているのは明らかだ。

顧客密着、地域密着が秘訣

 だが、複数の地域専門店の様子を取材する機会を得て、すべてが厳しい環境にあるわけではないことを実感した。

 むしろこれらの地域専門店では、顧客密着、地域密着によって確実に顧客を掴み、売り上げへと直結させているのだ。

 首都圏地区のソニーショップ44社が、11月中旬に開催した「ソニー感動・体感フェア 年末有楽町合展」では、各店の得意先顧客を限定で招待。3日間の会期中に、2億7000万円の売り上げを達成。前年比2桁増という結果になった。液晶テレビ「BRAVIA」の販売台数も、3日間で900台弱に達し、商談スペースは終日満杯という盛況ぶりだった。この会場にいる限り、昨今の景気低迷とは異なる世界にいる感覚に襲われるほどだ。

 ソニーマーケティング首都圏営業本部長・吉藤英次執行役員は、「地域に密着したソニーショップ各社の地道な活動が合展の成功につながっている。顧客の困ったことを理解し、それを解決してきたからこそ、厳しい環境のなかでも売り上げにつなげることができる」と語る。

多様なサービスが生む信頼感

 一方、愛知県で展開する、あるスーパーパナソニックショップも、この景況感のなか、着実に売り上げを伸ばしている。10月1日のパナソニックの社名変更にあわせて、旧来の「ナショナルのお店」から、「パナソニックのお店」へと転換したが、パナソニックが得意とする薄型テレビに加えて、エコキュートを核とした家まるごと提案でも相次ぐ受注を獲得している。

 同店では、店舗外の看板に販売している商品ではなく、サービス可能な内容を大きく表記。そのなかには、オール電化の相談、販売、施工に加え、オール電化に当たって利用できる補助金申請の手続き代行を含めているほか、さらには、インターネット回線の契約やLAN配線工事、地デジテレビの相談、そして、訪問しての電球交換までを明記している。

 同店におけるサービスに関する売り上げ構成比は1割以下。だが、これだけのサービスを、自ら実施できる体制を敷いていることで、商品を購入する新規顧客が増加しているのだという。

 また、商圏としている店舗から半径約2kmの範囲に点在する約500件の顧客は、電話口で名前さえ言ってもらえれば、住所がわかり、家の間取りまで頭に入っているという間柄。留守中に修理をしておいてくれ、という信頼関係もある。

 厳しい環境のなかで成長している店舗には、それなりの成長理由があるのだ。
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