店頭流通

リテール市場の新ビジネス 量販店、サポートメニューを強化

2009/12/03 17:00

週刊BCN 2009年11月30日vol.1311掲載

 大手量販店が本格的にサポート販売に力を入れ始めた。ライバル店との価格競争が激化するなか、独自のサポートメニューを拡充し、サービスの付加価値を高めることで差別化を図ろうという動きが出てきている。ハードメーカーは簡単操作を売りにするが、一般ユーザーにとって、パソコンなど各機器の無線接続やネット対応テレビの設定は煩雑で敷居が高い。ひと昔前のように詳しい知人に教えてもらうというレベルでは対応しきれなくなっている。量販店はここに着眼し、主力の製品販売の付加価値ビジネスとして有償サポートの強化を図っている。

“困りごと”にビジネスチャンスあり

ノジマ
日本初のパソコン診断機を導入


 「サービスの拡充。それこそリアル店が生き残る道」。大手家電量販店ノジマの野島広司社長はこう言い切った。同社は、メーカーの商品説明員などのヘルパーによる「押し付け的な販売をなくし、顧客に喜ばれるサービスを提供する」ことに注力してきた。今後もこの方針を貫き、積極的な人材採用を続けていく。その路線の延長として、製品販売に加え、販売後のサポート体制の強化を図る。

 同社は、測定器システムベンダーのワイ・イー・シーと連携して1年がかりで開発した日本初のパソコン診断機器を11月下旬から各店舗に順次導入した。ユーザーが店頭に持ち込んだパソコンを診断機器に接続すると、ハードディスクやメモリの不良、ウイルス感染や情報漏えいなどの問題を無料で診断できるというもの。これをきっかけに、有償のサポート販売に結びつける狙いだ。

 ノジマの今年度(2010年3月期)中間期の商品別売上高のうち、サポートを含む「工事・サービス」は21億6800億円で、前年同期比1.2%増と微増にとどまった。新サービスの開始を機に、今後は「一気に『工事・サービス』の売り上げを伸ばしていく」と意気込む。将来的には、「サポートレベルで日本一の会社を目指す」と、実弟が経営するピーシーデポコーポレーション(PCデポ、野島隆久社長)に対抗する姿勢をみせている。

ソフマップ
サポートを第三の柱に


 ソフマップ(平岡正行社長)も、サポート販売を商機と捉えて本腰を入れ始めた。サポート販売を「新品や中古販売に次ぐ第三の柱に育てる」(井手籠剛・サービス事業本部サービス企画部サービス企画課サポート推進チームリーダー)ことを目指している。

 サービスメニューを本格的に強化したのは今年3月。ソフマップとビックカメラで共通のメニューを用意した。ソフマップまたはビックカメラで購入した商品について、月額750円で問い合わせに対応する「らくらくオンラインサポート」の提供を開始。オプションメニューは、メモリ増設や家庭内ネットワークなどパソコン系メニューと、地デジアンテナ設置やプロジェクタ接続などデジタル家電系メニューをそれぞれ100種類ずつ設けている。電話番号などの問い合わせ先は、顧客が混乱しないようにソフマップとビックカメラで区別してパンフレットに記載しているが、内部ではソフマップが一括して対応するなどして、ソフマップのノウハウを生かしている。

 また、8月には60歳以上の層を対象にした「シニア限定 らくらくあんしんパック」の提供を開始したほか、10月22日からは、Windows 7発売にあわせて、販売促進を図っている。今後も「セットメニューのバリエーションを増やしていく」方針で、さらに「低価格化を図っていきたい」という。他の量販店との差異化ポイントとして訴求していく。

 カスタマーサポートは従来、利益を生まないコストセンターといわれていたが、「有料化することで、プロ意識が高まった」というように、スタッフのモチベーションが向上することで、会社としてのステータスが高まっているという。

 ターゲットは、パソコンやデジタル機器に詳しくない層や、初心者、シニアなど。ビックカメラとソフマップを合わせた「らくらくオンラインサポート」の契約数は、「平均すると、月に600件。潜在需要を掘り起こしてユーザーを獲得していきたい」と意気込む。そのためには、「ソフマップを知らなかった人に、いかに知ってもらうか」が課題だ。

ソフマップ秋葉原本館4階案内カウンター

PCデポ
強みはサポートビジネス


 一方、PCデポは、前出のノジマの野島広司社長が「サポートレベルで日本一の会社」と、評価するように、パソコンサポートでは他の販売店を圧倒する勢いだ。「サポート事業は、ネットが普及し始めた98年ごろから4年間、採算度外視でノウハウを積み上げてきた」(野島隆久社長)という自負がある。「他社で買った製品も無料で診断する」サービスも売りだ。「うちは、売り場よりもサポートカウンターに多くのお客さんが集まっている」(同)と苦笑しながらも、自信の表情を滲ませる。今年9月末時点で、保守サービス型商品の会員数は11万2000人に達している。

 PCデポの今年度(10年3月期)中間期のサービス売上高は、前年同期比31.1%増の29億9800万円。売上構成比でみると14.8%を占める。ノジマの「工事・サービス」売上構成比2.8%と比較すると、PCデポがサポートに注力していることは明確に数字に現れている。さらに、「サポートで黒字化が図ることができる」と自信を示している。

PCデポ狭山本店(埼玉県狭山市)では、約100台のパソコンをオペレーションできる

上新電機
安心と信用につなげる


 パソコンやテレビなどのデジタル製品が高機能化し、無線対応の機種が増えるなか、上新電機の奥垣年貢PCサポートセンター所長は、「例えば多機能なテレビは、利用されていない機能がたくさんあり、もったいない状況だ」と、実状を語る。販売店に求められているのは、「製品の販売だけでなく、環境エネルギーやランニングコストの軽減につながるトータルサポート」で、サポートと製品販売のバランスが重要というのだ。メーカー独自のサポートは各社ごとに異なる。だが、販売店のサポートは、「メーカーに関係なく、同じレベルで提供できる」(ソフマップの井手籠リーダー)。これがユーザーにとってのメリットになるわけだ。

 いまやデジタル製品は高機能・多機能化し、また機器間の連携が進み、一般ユーザーの知識レベルでは手に負えない状況だ。ユーザーがどこに相談すればいいのか悩み、その結果として、有料でも手厚いサービスを受けたいというニーズは確実に生まれている。販売店は製品を“売る”だけでなく、購入した後に“相談できる場”に変化していくのは間違いない。

キューアンドエー
「パソコンとテレビの接続」にビジネスの芽


 パソコン関連のテクニカルサポート事業を展開するキューアンドエー(金川裕一社長)は、一般ユーザー向けにパソコンの故障相談や修理、出張サポートを行う「デジタルクリニック高井戸」(東京・杉並区)に続く2号店として「クラブQ&Aショップ 自由が丘」(東京・世田谷区)を11月7日にオープンした。

 パソコンやデジタル家電の多機能化が進む一方で、一般ユーザーには「パソコンとテレビを繋ぐといった使い方はまだ広まっていない」(平尾千秋・取締役副社長)のが実情だ。同社は「そこに需要がある」とみて、今回オープンした自由が丘の新店では、パソコンの故障や活用に関する相談、セキュリティサービス、出張サポートなどに加え、ホームシアターを体験できるリビングルームを設置。ユーザーが実際に映像や音の臨場感を体感できる場を用意し、使い方を提案する。

 ターゲットは、自由が丘地区に住む高齢者や初心者層。また、繁華街へのアクセスも良いことから、「デジタル機器がネットワークで繋がることを知らない若者」などの潜在需要を掘り起こしていく。

 同社は、東京・目黒区にデジタル家電を設置したモデルハウス「Q&A コンセプトハウス NEXT」を設けている。「見学者には自由が丘の店舗で相談を受けてもらう」(狩野安秀店長)ように誘導していく狙いだ。

「クラブQ&Aショップ自由が丘」(上)の店内にあるリビングル−ム(下)
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