本連載「頂上熱戦」では、2社のIT・家電メーカーに“同じ内容の質問”を投げかけ、その回答を紹介する。(前編)では「製品戦略」を、(後編)では「販売戦略」を問う。
Question. 製品戦略は?
【共通質問事項】 (1)現在のトレンド (2)強み (3)ターゲット

(左から)エーピーシー・ジャパン「Smart-UPS 500VA」、オムロン「BY50S」
Answer.エーピーシー・ジャパン  |
妻鹿行雄 UPS事業部 チャネル営業本部 本部長 |
(1)【トレンド】IT関連製品全般で、省エネがキーワードになっている。UPSもその一つ。接続する複数の機器の電源制御によって、トータルでの消費電力低減が期待されている。また、企業だけでなく、一般家庭に普及してきたこともトレンドとして挙げられる。このほか、雷サージ対策に使われることが多いという製品の特性から、天候によって販売が左右されるが、2010年は雷の発生が多く、1~8月の当社の販売金額は前年同期比で2割増えた。
(2)【強み】製品の生産からアフターサービスまで、グローバルで手がける事業規模の大きさが強みだ。ユーザーの導入環境に適した製品を提供できる豊富なラインアップを武器に、世界市場で10年以上連続でトップシェアを獲得している。製品については、さまざまな電源容量を揃える常時インバーター方式/ラインインタラクティブ方式の「Smart-UPSシリーズ」に自信をもっている。一般企業の業務システムや製造・文教・医療分野に対して訴求していく。
(3)【ターゲット】家庭用からデータセンター用まで、幅広く製品を展開しているなかで、当社の販売金額のおよそ80%は、主に企業のサーバー用製品が担っている。法人向けとしては、「Smart-UPSシリーズ」に需要がある。一方、自宅のPCやサーバーに導入する個人向けは、電源容量の小さいラインインタラクティブ方式の「APC RSシリーズ」や、効率のよい常時商用方式の「APC ESシリーズ」に人気がある。
Answer.オムロン  |
筒井哲志 電子機器事業本部長 参与 |
(1)【トレンド】UPS市場は、IT関連サービスの動向やサーバーの販売に影響を受ける。例えば、今後クラウドを利用したサービスが増えていけば、小型サーバーを集約して大型化する動きが顕著になるだろう。これに伴い、UPSも小容量モデルから、データセンター向けの中・大容量の需要が増える。また、医療分野での診療報酬明細書などの電子化は、サーバーやPCの導入を伴うので、新市場として期待できる。
(2)【強み】消費電力が小さく、効率がよい常時商用方式で、小容量電源の「BYシリーズ」に優位性をもつ。PFC(力率改善)回路内蔵電源と相性がよく、現在、多くのサーバーが導入している。十分な性能をもちながらも、ボディは小型で軽量。さらに自社・他社製品と比べて安価に導入できるのもメリットだ。業界トップクラスの幅広い製品ラインアップを、求めやすい価格で提供していると自負している。顧客のニーズに応えられるよう、容量と給電方式を軸に、多彩な製品展開を心がけている。
(3)【ターゲット】中小企業、SOHOが中心だ。PCやエントリークラスのサーバーや、ネットワーク接続対応HDD(NAS)などのPC周辺機器と接続しているユーザーが多い。また、最近は個人でサーバーを導入している人が増えているので、彼らに対しても訴求している。ただ、当社の製品戦略の課題は、まだ中容量の市場でのシェアが低いこと。したがって、容量1KVA以上の中・高容量の製品を拡充し、積極的にアピールしていく。(井上真希子)