デジタルトレンド“今読み先読み”

2011年、売れるデジタル機器は? 購入意欲を刺激するキーワードが目白押し

2011/01/06 16:51

週刊BCN 2011年01月03日vol.1364掲載

 2010年は、「3D元年」「地デジ化」「スレート」「電子書籍」「スマートフォン」など、デジタル機器に関連するさまざまなキーワードが賑わった年だった。11年もまた、地デジ完全移行をはじめとして、さまざまな事象が起きるだろう。注目を集めるのは何か。10年を振り返りながら、11年に売れる製品・サービスを予測する。

1 スマートフォン
「こだわり」端末で本格的な拡大期へ

 2011年、スマートフォンは本格普及期に突入する。ソフトバンクモバイルの「iPhone」がほぼ独占していた市場に、10年春、NTTドコモが満を持して「Xperia」を投入。冬には、同じくNTTドコモが「GALAXY」シリーズと「LYNX 3D SH-03C」、KDDIがauで「IS03」、ソフトバンクモバイルが「GALAPAGOS」シリーズなど、OSにAndroidを採用する新端末が登場し、選択肢は一気に広がった。

 IT調査会社のMM総研は、国内携帯電話に占めるスマートフォン比率が、11年に18%、13年には41%に拡大すると予測。iPhoneでスマートフォン市場をけん引してきたソフトバンクモバイルの孫正義社長も、「スマートフォンの広がりはますます加速し、やがて全盛の時代がくる」と力強く語っている。

 もちろんiPhoneに限らず、これまでもスマートフォンは存在した。しかし、その多くは、HTCの「BlackBerry」など海外メーカー製だった。今、国内でのスマートフォンが注目されているのは、シャープ、東芝、ソニーエリクソンなどが、「おサイフケータイ」「ワンセグ」など、これまで一般の携帯電話がもっていた機能をもつスマートフォンを投入したからにほかならない。ガラケー(ガラパゴス携帯)と揶揄された日本の高機能携帯と、これまでのスマートフォンが備えていたネットワーク機能やPDA機能が一体化し、完成度の高い「こだわり」の端末になっているのだ。さらに、メールやインターネットの使い勝手など、これまで一般携帯から乗り換えるときに壁になっていたことが解決されつつあることも、普及への弾みとなっている。

 11年前半にスマートフォン市場に参入するパナソニックは、1号機で「生活サポート端末」として使いやすさを追求。「スマートフォンに関心はあるが買い替えていない」という一般携帯ユーザーをターゲットに据える。

 国内メーカーが「こだわり」のスマートフォンで携帯ユーザーの心をがっちりと掴むことができれば、国内でスマートフォンが主流となる日も近いだろう。11年がスマートフォンの勝負の年になることは間違いない。(武井美野里) 

KDDIは、2010年11月26日に発売した「IS03」にauの復活をかける


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2 電子書籍リーダー
コンテンツの中身と形式が普及のポイント

 2010年5月、アップルのiPad発売をきっかけにして、通信機能をもち、タッチパネルを備えた板状端末「スレート」が注目を浴びた。10年後半には、オンキヨーの「TW」シリーズやマウスコンピューターの「LuvPad」など、PCメーカー各社が追随した。

 10型前後と、比較的大きく見やすい画面をもつスレートの用途の一つとして挙げられるのが、電子書籍の閲覧だ。タッチパネルによって、ページをめくるような感覚で読むことができる。

 問題は重さ。例えば、iPadは680g(Wi-Fiモデルの場合)で、長時間手に持って読書するには不向きだ。また、点灯している液晶画面を凝視し続けて文字を読むのは目が疲れるという難点がある。

 そこで期待できるのが、小型・軽量で、目にやさしい電子書籍専用端末だ。ソニーは、画面に目にやさしい電子ペーパーを採用した電子書籍端末「Reader」を12月10日に発売。国内他社に先駆けて端末を発表し、注目を集めたシャープも、同じく12月10日に「GALAPAGOS」を発売している。

 GALAPAGOSの画面は液晶で、通信機能をもち、実際の性能はスレートに近い。しかし広報担当は「シャープならではの電子書籍専用端末を目指した」としている。さらには、専用端末ではないものの、スマートフォンでも電子書籍が閲覧できるようになり、対応端末は豊富になってきた。

 今後の課題として挙げられるのは、コンテンツの充実だ。現在、出版社や印刷会社、書店などが協力して、続々とコンテンツサービスを立ち上げている。紙の書籍の最新作や話題作を中心に需要を喚起しているが、実店舗の書店と比べると、まだ選択肢は限られている。また、端末メーカーは専用のブックストアを展開しており、コンテンツの汎用性は低い。今後、複数の端末間で共有できるファイル形式でコンテンツが提供されるようになれば、ユーザーの利便性が向上し、市場の拡大は期待できる。(井上真希子) 

ソニーの専用端末「Reader」は目にやさしい電子ペーパーを採用


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3 パソコン
「タッチパネル」が新たな需要を喚起

 総務省の発表によると、2010年9月末時点での地上デジタル放送対応機器の世帯普及率は90.3%。ただし、地デジ対応の主体はリビングルームのテレビで、家庭にある2台目、3台目のテレビでは進んでいないのが現状だ。そこでPC業界では、マイルームのテレビ視聴スタイルとして「地デジPC」をアピール。2010年秋冬モデルでは各社とも「地デジPC」のラインアップを強化した。

 アナログテレビチューナー時代の「テレパソ」とは異なり、Windows 7搭載の地デジPCは、受信エリアでの安定した受信性能と、映像を視聴するのに適した機能とスペックを備えている。テレビと遜色ない高精細な映像を表現でき、PCの基本機能と録画をはじめとしたテレビ機能の両方をもっているというメリットが、10年に入ってから、地デジ対策を考えている消費者に受け入れられるようになってきた。

 現在、地デジPCは、家電量販店のPC売り場を中心に展開しているが、販売拡大を図るためには、PC売り場に足を運ばない層にもアプローチしていくことが必要だ。テレビ売り場で地デジPCを展示するなど、露出度を高めれば、新たな購買層が生まれるだろう。

 PCの追い風は、地デジだけではない。iPadをはじめ、10年に新たに登場したジャンルのスレートでは、各社の製品が続々と登場することが見込まれる。さらには、スレートをきっかけに、タッチパネル対応PCへの波及効果も期待できる。直感的な操作性やペン入力を生かして、シニア層へのアプローチが期待できるほか、フィルタリングソフトや、学習用のeラーニングソフトなどを搭載した「キッズPC」市場が立ち上がってくるだろう。地デジの次は、「タッチパネル」が新たな需要喚起のカギだ。(田沢理恵) 

WDLC「パソコンも地デジカ」キャンペーンの一環として、家電量販店に地デジPCコーナーを設置


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4 Mac
すそ野の広がりで商流変革へ

 スマートフォンの「iPhone」、スレートPCの「iPad」や携帯オーディオプレーヤー「iPod」、音楽や動画の管理・再生ソフト「iTunes」、アプリケーション配信サービス「App Store」など、アップルの製品・サービス利用者が広がりつつある。これに後押しされるかたちで、同社のPC「Mac」の需要が増える可能性が出てきた。

 2001年発売のiPodが国内の携帯オーディオプレーヤー市場を席巻し、続いてiPhone、iPadも市場のリーダーになった。必然的に、これらの機器で使用する管理ソフトのiTunesや、コンテンツやアプリケーションを販売するiTunes Storeなどのサービスは、爆発的に利用者が増えた。アップルは、プラットフォームを握ったのである。もちろん、Macはこれらの機器との親和性は抜群だ。こうしたユーティリティに加え、「携帯オーディオやスマートフォンがアップルなら、PCもアップル」というアップルユーザーの意識も見逃せない。

 アップルは手を緩めることなく、App Storeでの映画配信サービスやネットテレビの「Apple TV」、iPhone/iPad向けの新OS「iOS 4.2」と、製品・サービスを次々とリリース。これらがMacの購入に波及する要素は十分にある。

 ただし、懸念がないわけではない。このところ、アップル製品を扱う家電量販店が減少しているのだ。アップルは、「製品のよさを訴えていきたい。そのあたりを家電量販店さんには理解してもらいたい」(広報担当)としているが、製品の商流が、今後どのように変化していくのか、気になるところだ。製品を扱う販売店の増減は、アップルと販売店、ともに売り上げの増減に直結する。販売店との間で、パートナーシップを深めていくことが重要だろう。(佐相彰彦) 

専門コーナー「Appleショップ」をオープンする家電量販店が相次いだ
(ビックカメララゾーナ川崎店)


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5 裸眼3D
3Dを活性化、モバイル3Dがカギを握る

 パナソニックが口火を切り、ソニー、シャープ、東芝、三菱電機が、専用メガネをかけて視聴する3Dテレビを相次いで投入した2010年。10月には、東芝が裸眼での3D視聴に対応した液晶テレビ「グラスレス3Dレグザ」を披露した。一方、小型端末では、シャープが裸眼で3D画像・映像が見られるスマートフォンを開発。12月には、NTTドコモとソフトバンクモバイルから発売した。また、東芝の「グラスレス3Dレグザ」も発売となり、ついに裸眼3D時代が幕を開けた。

 東芝の「グラスレス3Dレグザ」は、40V型以上の大型の開発にも着手しているが、現段階で商品化しているのは12V型と20V型。それぞれ12万円前後、24万円前後と、決して手の届かない価格ではないが、一般家庭のセカンドテレビとしては現実的ではない。それに、テレビの3Dコンテンツがまだ出揃っていないことが、購買意欲を失なわせる。

 一方、スマートフォンは、本体のカメラで手軽に3D撮影ができるので、身近な人や景色など、パーソナルな世界で手軽に3Dが楽しめる。専用メガネをかけずに3Dを見る端末なら、これまで使っていた端末と同じように、いつでもどこでも好きな写真を撮って、すぐに人に見せて楽しむことができる。迫力ある本格的な3Dではないものの、身近なものを3Dで見てみたいといった興味が、3Dの敷居を下げるのではないだろうか。写真や映像の新しい楽しみ方として、浸透する可能性がある。

 2011年2月26日には、3D写真の撮影ができる裸眼立体視機能付き「ニンテンドー3DS」の発売が控えている。裸眼とパーソナルコンテンツが、3D普及のカギを握る。(田沢理恵) 

「グラスレス3Dレグザ」を披露する東芝ビジュアルプロダクツ社の大角正明社長


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