写真や動画、文書などのファイルを保存し、他者と共有することができるオンラインストレージサービス「quanp(クオンプ)」。リコーは、「オンラインストレージ」という言葉がまだ普及していなかった2008年5月にサービスを開始し、着実に会員数を増やしてきた。しかし、いまやオンラインストレージは多くの提供会社から多彩なサービスが登場し、戦国時代を迎えている。生方秀直室長にクオンプの展望を聞いた。(取材・文/井上真希子)

統合型オンラインストレージを目指す
操作性の追求で差異化

Q. 2008年5月に、オンラインストレージ「クオンプ」を始めた狙いは。

A.
 リコーは、法人向けのプリンタ事業では有力メーカーとして確固たる地位を築いている。しかし、長期的に成長していくには、ほかの事業領域でもビジネスを展開していく必要があると考え、新規事業に着手した。具体的な目的は3点。一つ目は、コンシューマ領域でユーザーを獲得すること。二つ目は、ウェブを活用した事業展開。そして三つ目は、主力のプリンタ事業を支える基盤事業の構築だ。これらの実現を目指して具現化したビジネスが、クオンプだ。これまでお客様には、プリンタを通じて「紙」で情報を保存・共有することを提案してきた。クオンプなら、ウェブという媒体で同じことが提案できる。


Q. 現在、さまざまなオンラインストレージサービスがあるなかで、「クオンプ」の優位性はどこにあるのか。

A.
 世の中にあるオンラインストレージサービスは、写真や動画の保存が主目的だったり、メールで大容量ファイルを共有するものだったり、多種多様。そのなかでクオンプは、一つのプラットフォームでファイルの保存・共有が完結するサービスを目指している。また、機能面では、保存したファイルを探す全文検索機能や、サムネイルを立体的に見やすく表示するユーザーインターフェースなどにこだわった。ストレージは、概して容量に目が行きがちだが、クオンプは操作性で他社のサービスと差異化を図る。

Q. 「クオンプ」の今後の見通しを聞かせてほしい。

A.
 ひと言で表すと、簡便性を追求していく。ユーザーインターフェースの改善など、使いやすさをこれからも高めていく。また、10年6月に提供したiPhone向けアプリケーション「quanp for iPhone」のような、モバイル端末との連携は不可欠だ。例えば、写真・動画を簡単に共有するなど、クオンプがもつ多くの機能から一部を切り出した単機能サービスの提供も視野に入れている。現在、クオンプは国内向けのサービスとして提供しているが、米国で展開するベータ版を11年夏には正規版にする予定で、グローバルでの展開を考えている。

Q. オンラインストレージの市場全体を盛り上げていくための施策は。

A.
 10年に実施した調査では、「ウェブ上にファイルを保存する」というオンラインストレージを知らない人が、PCユーザーの半数以上いることがわかった。サービスを知ってもらうには、例えば、著名なSNSと連携して友達同士で活用してもらうなど、認知を高めていく努力が必要だ。安心して利用できる記憶装置としてのオンラインストレージが認められれば、今後、5年以内にニーズは拡大するだろう。

・Turning Point

 2000年、総合経営企画室に異動し、経営戦略の構築に携わったことで、経営に関する考え方や取り組み方を身につけることができた。現在所属するCPS事業室は、コンシューマ向けの製品・サービスを管轄する部署で、これまでリコーが足を踏み入れたことのない新規事業を開拓する、いわば社内ベンチャーのような場。まずはこの組織の立ち上げに関わり、尽力した。今は室長という立場で一つの経営体を統括する役割を担うが、事業のプランニングなど、総合経営企画室で培ったスキルが生かされている。