サービスの裏側に隠れる複雑さ
SaaS課金代行サービス「AXLGEAR(アクセルギア)」を立ち上げてから7年目にして30万余りの契約件数を獲得した。一口にSaaS課金といっても、多品目、代理店の卸価格、大口契約の割り引き、キャンペーン期間など、多様な要件に対応できる機能群が必要であり、非常に複雑となる。これらを「毎月正確に処理できる点が顧客から高く評価された」と胸を張る。
SaaS化への道のりは見えていた
だが、ここまでの道のりは決して平坦なものではなかった。「技術者として腕試しをしたい」との思いで脱サラ起業した2008年、まさかのリーマンショックに遭遇。初手から大きくつまづく。すでに業務アプリのSaaS化の流れは見えていたことから、独自の課金代行サービスの開発を志すも、突発的な不況により開発資金を稼ごうにも稼げない。
手を差し伸べてくれたのが、データセンター会社のビットアイル(当時)創業者の寺田航平氏(現・寺田倉庫社長)だった。13年にいったん同社の子会社となってクラウド基盤の研究に従事しつつ、AXLGEARの開発に着手。15年にサービスを開始し、翌16年にMBO(経営陣による買収)によって再び独立企業となる。
「地味な作業でも丁寧に」が信条
新卒で入社した日立ソフトウェアエンジニアリング(現日立ソリューションズ)の先輩からもらった言葉「地味な作業でも丁寧に」が信条だ。華々しいSaaSアプリに比べて課金システムは裏方で目立たない。それでも一つ一つの工程の丁寧な作り込みが顧客のビジネスと信頼を支えている。
業容拡大と働き方改革を受け、静岡県伊東市のペンションを買い取り、ワーケーションの拠点を21年秋に開設した。今後はIoTなどハード製品を含めた課金代行や、B2C領域への進出も視野に入れたサービス開発に乗り出し、シェアリングエコノミー時代の課金インフラの地歩を固めていく。
プロフィール
長谷川章博
1977年、東京生まれ。2000年、立教大学物理学科卒業。同年、日立ソフトウェアエンジニアリング(現日立ソリューションズ)入社。08年、AXLBIT(アクセルビット)を起業。趣味は“馬上ラグビー”の「ホースボール」。
会社紹介
2008年、ソフト開発会社として設立。13年、ビットアイル(現エクイニクス・ジャパン)の子会社となる。15年、契約管理・課金代行サービスの「AXLGEAR」を発売。16年、MBO(経営陣による買収)によりビットアイルから独立。20年、KDDIが資本参画。同社の関連会社となる。