これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「ソナス・大原壮太郎代表取締役CEO」を取材しました。
働き方を見直し起業
会社員時代、仕事は充実していたが、長い通勤時間に加え残業が多く、誕生したばかりのわが子と過ごす時間が取れない日々が続いていた。子どもが保育園に入ると、連絡帳などのやり取りのアナログさを何とかしたい、自身の働き方を見直したいとの思いもあり、退職と起業を決意。保育園向けの事業は競合も多く断念したが、学生時代の仲間から、大学で長年研究した無線センサーネットワークを製品として世の中に広めないかと誘われた。社名に込めた「礎(そ)を成す」が実現できると、次世代IoT無線の開発を開始した。
黒子としてインフラを支える
自社の無線システムが多く導入されているのは、建設業界と鉄道業界だ。建設現場でクレーンの傾きをセンサーで察知しアラートを鳴らしたり、鉄道の架線を支える柱の保守点検時に柱の傾きをセンサーで感知したり。「信頼性が重要な場所の安全を無線が支えている」と意義を語る。建設業界は人手不足、鉄道業界は利用者減で、いずれも省人化が課題だ。インフラの維持管理に無線を活用したシステムが貢献できると考える。一般の人の目に触れることはほとんどない製品だが、「黒子として社会インフラを支え、快適な暮らしが続くお手伝いをしたい」
判断基準は「誠実」
会社を経営する上で大切にしているのが、誠実かどうか。二つ選択肢があるとき、どちらが相手に対して誠実かという判断基準で物事を決める。例えば、顧客からこういうシステムを作ってほしいと依頼を受けても、他社製品のほうが顧客にメリットがあると感じたらそちらを紹介する。これは顧客に限らず社員に対するときも共通で、そういった思いが自社のカルチャーとして浸透し、製品にも反映されていると感じている。インフラの維持管理という社会的意義の大きい役割に、無線を活用したソリューションで誠実に向き合い続ける。
プロフィール
大原壮太郎
1983年、三重県出身。東京大学大学院工学系研究科修了。2010年、ソニーに入社し、GPSやデジタルテレビなどの半導体開発に従事。東京大学先端科学技術研究センター勤務を経て、15年にソナスを創業。
会社紹介
独自開発したIoT向け無線通信技術「UNISONet」を使った製品を展開。高速通信の安定性、省電力、双方向低遅延などの特徴があり、ビルや橋梁などのモニタリング、製造や物流現場で機器の予知保全のセンサーなどに幅広く採用されている。