これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「Resilire・津田裕大代表取締役CEO」を取材しました。
豪雨災害を機に社会貢献を志す
2018年、大阪に住んでいたときに西日本豪雨が発生し、大きな被害が出た岡山県倉敷市の真備地区にボランティアに行った。復旧作業をする中で、被災地のために何かできないかと考え、災害予防サービスの事業化を志す。ボランティアの受け入れ管理、物資マッチングサービスなどをつくったが、「課題の解決幅が小さく、ビジネスとしての成長に限界を感じた」
そんな折、コロナ禍に入り、製薬会社から「調達先から原料が仕入れられず、製品をつくれなくなってしまった」と相談を受けた。自然災害だけでなく、多様なリスクでサプライチェーンの寸断が起こることを痛感。サプライチェーンの安定を実現するソリューションの開発を開始した。
人生をかけるやりがいのある仕事
サプライチェーンのリスク管理の領域は、参入する企業がほとんどいない分野だった。相談を受けた製薬会社が直面する課題解決を目指しながら製品開発を進め、薬という人の命にかかわるものが途切れなく必要な人に届けられる支援ができることに、大きいやりがいを感じた。
高校時代から、働くことで人の役に立ちたいとの思いを抱いてきた。自分の原動力になるのは、いかに大きな領域で社会貢献できるかという指標だ。サプライチェーンの課題解決に取り組み、「人生でなかなか見つけられない、やりがいのある仕事を見つけた」
ものづくりの共通基盤に
自社ソリューションは、直接の取引先だけでなく、その先の2次3次も含め、どこからどんな品目を買っているのか、それがどこで製造されているのかといった取引環境を可視化できるのが特徴だ。可視化することで、調達先を分散するなど寸断要因が発生したときの代替手段をあらかじめ確保できる。製薬、工作機械、印刷、食品などの業界にも応用でき、データ活用による在庫適正管理など普段の生産性向上にもつながる点が評価され、大企業を中心に導入が拡大している。
ウクライナでの戦争、国内でも1月の能登半島地震など、世界中でサプライチェーンの混乱は起こり続けており、自分が果たす役割も大きくなると感じている。「ものづくりの共通基盤として社会に広げていきたい」と前を向いた。
プロフィール
津田裕大
1996年、兵庫県出身。大学在学中にインターンとしてWebサイトのデザイン、営業代行の仕事などを経験。大学4年時にシステム開発やWebサイト制作を受託する会社を起業。西日本豪雨をきっかけに、災害予防サービスの事業化を目指し、2018年にTech Design(現Resilire)を創業。
会社紹介
サプライチェーンのリスク管理クラウド「レジリア」を提供。サプライヤーの情報を可視化し常に最新のサプライチェーンデータベースを保持できる体制を構築。自然災害・インフラの停止・事故・テロなどサプライチェーンの寸断要因になるリスクを自動で取得し、影響範囲を瞬時にリストアップすることができる。