これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「フェズ・伊丹順平代表取締役」を取材しました。
これまでの経験を生かして起業
テレビ離れがささやかれ始めたのは、メーカーの社員として勤務していた頃だった。SNSの重要性が高まっていたにもかかわらず、有名俳優を起用したテレビCMに多額の費用をかけるなど、小売業界の非効率性に直面した。しかし、一社員の立場では問題点を提起し、改善していくことの難しさを感じた。
その後、米Google(グーグル)日本法人で小売業などを支援する営業職を経て起業した。小売業の課題にデータでアプローチする今の事業には「社会人として経験してきたことの全てを詰め込んでいる」。目指すのは「事業を通じて、小売産業を成長へと導くこと」だ。
自分の弱みをさらけ出す
「自分1人では世の中を変えることはできない」。自分の力に限界があるからこそ、優れた人材を集め、活躍してもらいたいと考えている。優秀な人についてきてもらうために、事業のミッションやビジョンはもちろん、自分自身がどのような人間なのかを積極的に伝えるようにしている。特に意識しているのは、自分の弱みをさらけ出すことだ。「できないことや困りごとを共有するようにすれば、周りの人が補ってくれるようになる」
入社してくれた社員が成長できる体制をつくり、会社の外に出ても活躍できるようにすることも自分の仕事だ。活躍できる人材を輩出することが、社会への貢献につながると信じている。
会社にふさわしい自分であるために
売り上げを伸ばすにはどうすればいいかだけを考えていると、それなりのスケールの会社にしかならない。今後、1000人や2000人規模の会社を目指している経営者に大切なのは、「事業を通じて社会にどれだけ貢献できるかに軸足を置く」ことだと分析する。
会社が成長する過程で、その都度、経営者としてふさわしいかどうか自問自答するように心掛けている。「自分に足りない部分を感じ取り、改善を重ねることが大切」。5年、10年先を見据え、会社とともに成長し続けるために、これからも努力を怠ることはない。
プロフィール
伊丹順平
1985年、岡山県出身。2009年に東京理科大学工学部卒業後、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(当時)に入社。営業担当として大手流通会社を担当した。12年に米Google(グーグル)日本法人に入社。消費財メーカーや小売流通業界へのデジタルマーケティングの企画立案や広告営業、オムニチャネル戦略に従事。15年にフェズを創業。
会社紹介
小売企業から提供された購買データや店頭データ、販促データなどを管理・分析する小売データプラットフォーム「Urumo(ウルモ)」を開発。Urumoを基に広告メディアと連携することで、購買効果を可視化し、メーカーのマーケティング課題を解決する広告ソリューション「Urumo Ads」などを提供している。