これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「グラファー・石井大地代表取締役/創業者」を取材しました。
有用な時間を作る
行政サービスはあらゆる人が利用する一方で、書類手続きの手間や受付での待機時間など負担が大きい。「生産的ではない業務は、必要な手続きだとしても、そこにかかる時間を極力0秒に近づけ、有用な時間に転換するべきだ」
「より多くの人に自社が提供する価値を届けたい」と思う。自治体や官公庁といった、その先に大勢の人との接点を持つ組織の課題を解決できれば、社会全体の営みをより良いものにできる。
プロダクトで社会を変える
「プロダクトの力で社会を変えたい」。政治家になって法律を変えなくても、プロダクトを通して利用者の行動を変容できれば、社会課題の解決に近づける。社会変革の方法は、プロダクトを起点に考えれば、選択肢が無数にある。
重要なのは、時代に合ったUX(ユーザー体験)や安全な利用環境を提供し、「使われるプロダクト」を追求すること。「既存の枠組みの中にいても、消費者のニーズを踏まえた切り口次第で世の中は動かせる」
会社は作品
小説家としてプロデビューした後に、起業家の道に進んだ。「小説でもプロダクトでも、自分の表現を世の中に問うという意味では変わらない」。社会通念に対して新しい視点を提示し、現状から脱却する糸口を示せれば、それは「成功した表現」だと考える。
「会社もまた作品」と捉え、投資家や顧客を変革に向けて前向きにさせる魅力的なストーリーを提示する組織を目指している。良い作品は誰が作ったかに関わらず、それ自体が人を引きつける魅力を持つもの。会社経営でも同じように、創業者の声だけではなく、関係する多くの人たちが議論や行動を重ねながら、多様な視点で世の中に価値を問う集団を築きたい。
プロフィール
石井大地
東京大学医学部に進学後、文学部に転じ卒業。2011年に第48回文藝賞(河出書房新社主催)を受賞し、小説家としてプロデビュー。その後、リクルートホールディングスなどを経て、17年にグラファーを創業。
会社紹介
行政機関の業務のデジタル変革を支援するサービスを展開するほか、大企業向けに生成AIの活用を支援する「Graffer AI Solution」などを提供する。